映画『タイクーン』の感想 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

タイクーン!

 

 

頭を使えってチョーパンかよ

舞踏に秘められた伝統の武術を極めようとするムエタイ活劇って事でトニージャー張りにノンストップで暴れまくる痛快アクションを期待した訳だが、ちょっとヴァイオレンスの方が洒落にならない事に。かつての妻の妹と主人公の仲たがいはコミカルで楽しいのだが、そいつらが立ち向かう権力ヤクザがガチでヤバい。ナンパした女をベッドに縛り付けて切り刻むサイコパス野郎が父親の権力で野放し状態。基本的に主人公たちはムエタイの達人なので素手で戦う訳だが相手はチャカもヤッパも躊躇なく平気で振り回して来る。そんで警察が来れば捕まるのは素手で正当防衛してた主人公の方ってな狂ったマフィアワールド。

 

ただ有力政治家とはいえど一応は民主社会なのでSNSを使った地元民の告発で親父さんの方は次第に失脚してゆく。ただ息子の方は根っからのサイコパスなので親が危機になっても我関せずで好き放題に暴虐の限りを尽くします。そもそも主人公の元妻を殺した回想にしても、このサイコパス野郎は遊びで主人公たちを銃撃して来て、その罪を主人公に着せて投獄します。サイコパスと権力の組み合わせは正にキチガイに刃物。最近の日本の親米政治家と同じで国賊反社のサイコパス野郎が権力を好き放題にして弱者を片っ端から殺して楽しむって感じです。

 

それに対して主人公はどうも妻を殺される前から根暗な性格らしく悪役への憤激と怨念に満ちていて挑発されるとすぐに暴れ回るのでムエタイマスターである祖父から「怒りに任せるな頭を使え」と𠮟られ続けます。この怒りを克服すれば最強の奥義を獲得できるのだなとワクワクしながら見てた訳だが、この主人公は最後まで怒りのまま突っ走ります。そんで悪役をやっつける決め技がチョーパンって「頭を使うってそっちの事かよ」と思わずツッコミを入れてしまいました。ってえか多分この主人公は奥義自体は獲得していないのでしょう。とにかく暴虐の限りを尽くすサイコパス極道に抗って必死で闘ってるだけだから。これが純粋にカンフーアクションならば格闘家同士が技で競い合う訳だが相手がサイコパス極道じゃ法廷闘争も使えばSNS世論誘導も使えば拳銃も使うというガチで社会的に潰し合う大人の喧嘩ですから、やはりムエタイの方は二の次になってしまいます。