映画『シチリアの恋』の感想 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

シチリアの恋

 

 

薄弱的な彼女

 

別にマフィアの話でもイタリア映画でもありません。ほとんどが上海で展開する悲恋のドラマです。イタリアから留学して来た韓国人と地元の中国人が上海の大学で恋に落ちて、そのまま同じ設計事務所に就職したがイタリアに里帰りした彼氏が急死。彼の仕事を引き継いで約束通りにバー設計の仕事を仕上げようとするが彼と違って彼女の能力値は低かった。クワンをはじめとして中国系スタッフが中心で作っている訳だが、これがどうも内容的にも構成的にも、かつての韓流ラブストーリーの売れ筋クァクジェヨンにソックリな作風に仕上がっています。ただ一点違うのは女性が強くないって所。今作のヒロインは強気な所もあるものの基本的に鈍い感じで前半のダメダメな生活を見ていると軽い精神薄弱なのではないかと思わせます。ショックなのは分かるが現実逃避気味過ぎます。そのリアクションが切なさを誘うのだろうけど個人的にはキャラとしての魅力を感じません。それ故に泣かせるなら、こんな風にトリッキーな展開で後半に種明かしするよりも、さり気ない日常を見せるシンプルな方向性の方が良かった気がします。

 

ただ陽気な彼氏のエピソードについてはそれなりに笑えただけに今作では韓国側キャストの方が魅力的に見えました。このヒロインのような働き方は雇用主側からすれば大迷惑。建築家としての能力値も低いという話なので普通なら、できるだけ早く解雇したい所でしょう。ふと一昨年に切らざるを得なかった若い女性クリエイターの顔が浮かびました。トドのように荷物置き場に寝っ転がってスマホをいじっていた彼女の別れ際の表情を思い出すと胸が痛みます。どうかこの恐慌を生き延びていて欲しいと願います。