『ビッグバグ』の感想from映画生活 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

2022-03-01の投稿

ビッグ・バグ

 

 

ホモサケル化

 

かつてフランス映画祭で『ミックマック』を発表する際に舞台挨拶で「ビッグマックではありません」と掴みネタをかましてたJPジュネ監督が再び同じ掴みネタで天丼をかましにかかる。ってえか今作のタイトルと足したら本当にビックマックじゃないか。ただ今回はネトフリ資本だし今後映画館文化は消滅するので劇場でその掴みネタをカマせるかは怪しい所。本作の時代設定はいわゆるシンギュラリティ後という設定になっている訳だが、どちらかといえばホモサケル化して腐ってしまった現代人を強烈に皮肉る内容になっています。ヨニークなるマシンとのハイブリッドの新人類が君臨する未来世界において自宅に閉じ込められた家族の珍騒動を描いたスチュエーションコメディ。マシンの反乱で外出が危険になったという名目で強制的にステイホームになった人々。最後の方には露骨にコヴィット50出現なんてネタもかまされます。つまりは近年の疫病騒動により暴露された現代人の腐敗っぷりが象徴されているのです。

 

ヨニークに飼われた家畜と化した人間を描いたコントで映画は始まります。それは自分の命だけに恋々としがみ付く卑しい獣と化した現代人のメタファーである事は明白で、エアコンを止められて茹で蛙になってゆく人々の無気力感も、まるで我々を映し出す鏡のようです。ジョルジュアガンベンが抱いた危惧は日本ですらも正当な知識人の多くが持ち続けているが、それらの人々はマスメディアのメインストリームから排除され御用学者やコタツ記者というクズリーマンが学者やジャーナリストのふりをして大衆の反知性化を加速しています。それに対して声を上げられる側に娯楽監督ジュネもいたとは結構意外でした。この監督のコンセプトは内面的である事が多くて社会派とは全く程遠いようにも思えていたが、ここまで痛烈に人間の劣化を批判するとは。かつて"日本が売られる"で注目された堤未果も最近GAFAMによってスピード依存症にされた現代人の知性が劣化しつつある危惧を述べている訳だが、その問題点が余す事なく出ているのが本作。大衆が家畜と化す日も遠くないだろうが日本人は真っ先に屠殺対象だろう。それこそ社会のバグを皮肉ったタイトルだが、それに翻弄される現代日本人は知能クソ虫レベル。