映画『第三夫人と髪飾り』の感想 | アキラの映画感想日記

アキラの映画感想日記

映画を通した社会批判

第三夫人と髪飾り

 

 

未成年マタニティ

若干14歳にして金持ちの愛人として嫁がされた少女の物語。山深い地方集落が舞台で電気等の近代インフラが整っていない所から察するに遠い昔の設定なのだろう。この嫁ぎ先で少女は様々な理不尽を目にして迷いながらも金持ちの息子を孕み出産する。やたらと濡れ場があるので日本じゃ韓国の『桑の葉』シリーズ等と同様にアジアのエロチック系に分類されています。むしろ少女の苦悩はベトナム版『愛人』って感じな訳だが。この集落では金持ちオヤジだけが複数の未成年女子を愛人として囲い身勝手なセックスをしてる一方で一般の青年が恋愛をすると鞭打ちの刑にされる。つまり性の独占が起きている。この青年が女性を抱く時には優しくクンニして相手を喜ばせるセックスをしているのに対し金持ちオヤジはろくに前戯もせずにいきなり挿入して一方的に自分だけ愉しむ。この環境下で本当のセックスの気持ち良さを味わいたいヒロインは他の夫人とビアンに走ろうともします。そんな彼女の欲求や意志は何一つ汲まれない。ただ家族としての包摂があるだけ。そんな抑圧された環境を自然の摂理を思わせるような描写の中に描き込んでいます。

 

この作品のショット構成は日本に例えるなら河瀬直美作品のように自然の生物のクロースアップをやたらと挟み込んでいて主人公の心境を情景の中に埋没させます。それこそ現実がそうであるように様々な理不尽にさらされながらも命を掛けて抵抗する所まで行かずに「まあいいか」と思わせるような生命の本能に説得力があるのです。このヒロインも金持ちの子を産む事に迷いがあり逃げ出したい気持ちに揺れながらも普段の生活の心地よさに妥協しています。この金持ちオヤジは彼女たちを性の捌け口のように利用するが、その普段の態度は穏やかで決してDV等をする事はなく彼女たちの生活を支えるだけで過度な干渉はしないし彼の妻たちは優しいから居心地の良い家族ではある。これならば多少の理不尽に目を瞑るのも納得できます。