『共喰い』の感想from映画生活 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

2019-12-31の投稿

共喰い

 

 

DV連鎖

 

思わず根岸の『ひとひらの雪』かよと突っ込みたくなりました。とりあえず青山作品だからチェックしてみたが最近は露骨な立教ヌーベルバーグ系のジャンル不特定な手法の特徴を出す事はあまりなく、むしろ大芸ヌーベルバーグの熊切とかを思わせる典型的文芸系って感じの手法で仕上げられていました。とある地方集落の狭い人間関係の中でDV男の息子が自らの性癖に苦悩するってな内容。戦時中に手を失った義理の母に関するナラタージュで始まってセックス中に女性を殴る父の性癖が語られる。これは世間的な定義からすれば典型的なDV行為として糾弾したくなる所だが、この作品ではそんな社会派的な側面は全く見せずに、ただただ個人の欲望と葛藤のドラマとして生々しく狭い人間関係の中でのドロドロした男女の愛憎を晒す。ヤリたい盛りの若者が他に娯楽もない街で隣人の女性を抱いたり義理の母に劣情を抱いたり自分の中にある暴力衝動を頑なに隠し続けたり。それを濡れ場の連続で見せているからセックスシーンの多さだけはポルノ並です。ただタイトルが表すように閉塞感がやたらと強い文芸モノなのでセックスの気持ち良さよりも気持ち悪さの方が強く印象付けられます。それこそ『丑三つの村』や『祭の準備』等のコミュニティ映画に描かれるような気持ち悪さです。ちょっとばかし今やるネタとしては時代遅れな気もします。