『LOFT』の感想from映画生活 | アキラの映画感想日記

アキラの映画感想日記

映画を通した社会批判

2006-09-27の投稿

LOFT ロフト

 

 

身体が捩れた

 

黒沢清と園子温をハシゴ。偶然にも同じ新宿で上映時間がピッタリだったとはいえ何ともカルトな組み合わせだ。でも、このカルトとかジャンル映画って呼び方がこれらの作家をマイナーって認識させる。今回はジャンル映画の枠を飛び越えたみたいな云われ方をしてるけど、元々そこに隔たりなんてない。ジャンル分けなんて極めて主観的な押し付けで、分類するとすれば国籍と作家名位しか正確な分類はあり得ない。更に細分化するなら舞台背景位だろう。明らかに内容を知らずに名作だの恋愛モノだのヒューマンドラマだの分類されてるビデオ屋には腹が立つ。スプラッターホラーコーナーにある黒沢清の『スウィートホーム』だって主観で云えばヒューマンドラマだっつうの。監督自身はホラーだってこんなに自由だって云いたかったらしいけど、80年代の米国スプラッターがやりたい放題やったせいかホラーって枠自体が曖昧になってるようにも思える。

 

そんな中でも今回の作品はちゃんとホラーしてる。怖えーじゃねえか安達祐実。ミイラよりも幽霊の見せ方にやられてしまった。彼ならではの気持ち悪さ全開。黄金分割を微妙にずらした構図作りとか編集点をずらした間とか生理的に気持ち悪いやり方をこれでもかと見せつけてくれた。あからさまにヒッチコックだったりゼメキスだったりするシーンはわざとらしいが、彼ならではの怖さは充分に出てる。スピルバーグに代表されるフォルマニズム派の主張に追随する監督の価値観からすれば単に筋を通した作品なんかよりミスリードを誘う多少のインチキはあってもより観客を震え上がらせる作品の方が意義深い。表現媒体が映画である以上フォルマニズムとは絵だけの問題ではなく演出全体が文学に依存しない部分でいかに感覚に訴えるかって問題だから。そういった意味でも今回はなかなか良い仕事をしたと云える。静かに忍び寄る気持ち悪さに身体が捩れた。