2006-09-26
水没の前に
続・長江の夢
ネタ自体は『長江の夢』でもAP系日本人監督に取り上げられていたダム建設。単に撮影時期の問題だが今作はちゃんと一部が沈む所まで見せてくれる。ナレーションなど全く使わずに水没地域からの移住に伴う弊害を住民と政府側の度重なる衝突と話し合いを通してじっくりと見せてくれる。まるで良質な群像劇みたいにミニマムな事柄が複数合わさり全体像が浮かび上がる構造。決して客観せずそれでいて下手に感情移入はさせない。したたかに儲けようって住人もいれば本当に困り果てた住人もいる。理想的な距離感で住人を追いダム建設事業を見せる。
毎年の事ながら山形での大賞作品は国内で歴史を変えるとか大げさに褒められているけど、2005年度のこの作品は普通に良質なダイレクトシネマって印象で大胆にぶっ壊す事ない正統法だからこそ魅力的だった。実に適切な場にカメラが入って大規模な事業を繊細な視点で切り取る。それってダイレクトシネマの歴史を変えるってより、最も模範的なダイレクトシネマの方法論じゃん。それが成功してるからこその魅力だ。モチーフを巨大事業に置きながら住人で追うって所は『鉄西区』にも似ている。最近の流行なのかなこの傾向。どちらにせよ一応ここまで見事に描き出されているんだから大賞には異議なし。