2018-06-10の投稿
クリーピー 偽りの隣人
家族カルト
多分、着想は北九州監禁殺人事件あたりにあるのだろう。マインドコントロールで洗脳した家族に紛れ込み搾取して自分の家族を殺させるという犯行。実に陰惨で不気味な犯罪。立教ヌーベルバーグ系は青山真治にしても実際の事件に影響を受けた作品に当りがある。Jホラーブームの元祖黒沢清が今回はノワールサスペンスとして発表した作品だが、むしろいつものホラー作品よりも怖くて引き込まれた。やはり隣人のキャラが少しムカつく弱い奴って感じの所がミソで実際にどこにでもいる厄介なトラブルメイカーだが、いざって時は簡単に制圧できそうに感じられるからこそ油断が生まれる。こんな奴でも無防備な家族に紛れ込まれたら厄介だ。なんせ弱い奴ほど他人の一番弱い所に攻撃的だから。いつもの黒沢作品らしい次に何が起こるか分らない空気感が実にスリリングで『ニンゲン合格』や『トウキョウソナタ』にも通じる希薄な家族観こそが卑劣な犯罪者に付け込む隙を与える弱味として恐怖を盛り上げる。「あの人、お父さんじゃありません」それは黒沢作品特有の世界観故に犯罪の恐怖よりもより強大な不安を感じさせる。ちなみに主人公は殉職しかけた刑事で現在は大学教授って設定な訳だが最近は少子化にも拘らず大学に官庁の天下りポストがやたら増えているようで、そっちの教育行政の在り方にも不安を感じる今日この頃。