『ある子供』の感想from映画生活 | アキラの映画感想日記

アキラの映画感想日記

映画を通した社会批判

2005-12-12の投稿

ある子供

 

 

軽過ぎた認識

 

いつだったか無職の若い女性二人組が営利目的で児童を誘拐した事件があった。

事件はスピード解決したが、犯人は誘拐に対する刑罰の重さに驚いたらしい。

つまり、それだけ重い罪を犯している事を充分に認識せずに起した犯行だった。

腹を痛めて産んだ子を奪われた母の感情に想像力が至らなかった結果でもある。

この作品の登場人物にも、そういった想像力や罪に対する認識が欠落している。

男を連れ込んでいる母等から察するに、良くない教育環境もその一因なのかも。

 

貧困層の若者に赤ん坊が生まれるというペドロコスタの『骨』みたいな設定。

でも大胆な省略はせず、逆に解り易過ぎるほど丹念にこの主人公を追っている。

むしろギャスパーノエみたいな不快さを煽る強烈なリアリズムの狙いを感じる。

犯行に認識不足だった主人公と共に観客も断罪されたような感覚すらも残す。

なぜなら、自らの認識不足で他人を傷つけるなんて日常的にあり得る事だから。

まるで莫迦は罪だと認識不足だった事実を提示されたかの様な気持ちの悪さ。

淡々としている様で実に周到に引き込まれる。吐き気がする程の力作でした。