2005年12-13の投稿
アフガン零年
ぬれる日
先日のアフガニスタン映画祭は、フィルメックスと日にちが重なって行き損ねた。バルマクの未公開作も含め10本以上の作品が来てたらしい。タリバン政権崩壊後ようやく娯楽文化も復興し始めたが、まだ国内には商業的な規模の映画館がなく、せっかく映画を作っても本国より外国で上映している。隣国は協力的なようです。国境を接するパキスタン、トルクメン、タジキスタン、ウズベキスタン、イラン。旧ソビエト連邦は映画文化を大事にしていたらしく、それぞれの地域に出資して映画人を育てて、傑作ができると吹き替えてロシア映画として発表していたので幸か不幸か隣国には映画史の断絶はなく人材はいる。だが『カンダハール』以後、現地人による映画文化の復興が成されるべきだと考えたモフセンマフマルバフは、この企画をNHKに依頼。現地人バルマクを監督に据えた。今となっては有名な話。
この作品には、タリバン政権下にあったこの国の問題が女性の人権問題を中心に盛り込まれてる。医療器具や薬が不足した病院。『日陽はしづかに発酵し』でも未だにハンセン病の治療が受けられない人々が冒頭に映されてたが、もっと深刻。薬があれば直るはずの病気や怪我の化膿で人が死ぬ。報道でも伝えられていた。これも報道で既に伝えられた事だが、厳格なムスリムの戒律を守るタリバンは女性の労働を許さない。この物語は働き手を失った家庭の女の子が男に化けて労働しようと試みるシンプルな話。所々ストレート過ぎるが、退屈はさせない。この作品でイスラム圏の女性問題に触れたマフマルバフの問題意識は、そのまま次作『セックスと哲学』に受け継がれているように思える。アフガニスタンとタジキスタンを行ったり来たり、もう母国イランに帰る気はないのかもしれない。印象に残ったのは風呂場のシーン。「ぬれる日」ってのは初めての夢精の事かな。儀式自体も興味深いが、そこに男装した美少女が紛れた状況が何ともエゲツナイ。絵的には木に登るシーンとか良かったけど、マフマルバフ口出したんじゃねえかと思わせるショットがいくつかある。文化が育つにはまだまだ時間がかかりそう。
