映画『見えない目撃者』の感想 | アキラの映画感想日記

アキラの映画感想日記

映画を通した社会批判

見えない目撃者

 

 

疑似姉弟

 

日本でもリメイクが決定した台湾のサスペンスミステリー。タイトルにある通り誘拐現場に居合わせた元警察学校で有望視されていた盲人の女性がスタンドプレーで犯人を捜す中で自分の過去と折り合いをつけるというドラマ。この女性の弟には音楽の才能があり両親がなけなしの貯蓄で学費を払って音大に通わせていたが彼は自分の音楽をやる為に学校を辞めて、その資金で楽器を買いバンドを結成。不良のたまり場で魂の叫びを歌うロック歌手を始めた。だが真面目な姉としては両親の期待を裏切る彼を補導しようとして誤って弟を殺めてしまい、その際に自分も目を負傷し視力を失った。そんな過去を抱える彼女の前に現れたもう一人の若い目撃者は弟を思い出させるような不良少年。弟の叫びを代弁するかのような口調。彼は弟のロックバンドの大ファンだった。そんな疑似家族のドラマがありつつも、この作品は盲目とそれを補うスマホというギミックの使い方が実に上手い。

 

ミステリーとしても決定的な誤読を生んで意外な方向に展開するしサスペンスとしてもスマホの映像を見ている少年に誘導されながら逃げ回るハラハラ感は秀逸。前半は特にそれらの見事さにやられまくりました。ただ後半は少々予定調和になって前半に比べるとトーンダウンするが、そこで展開される疑似家族のドラマはグッと来ます。これは版権買いたくなるのも納得です。この誘拐犯にはミソジニー的な所があって妹の売春を許せないって気持ちから犯行が始まる。それ故に弟を拘束しようとして殺めてしまったヒロインにシンパシーを感じている。だが例え血が繋がっていても他人の自由を奪う権利はない。むしろ他人は偏狭で教条的な価値観の外側を見せてくれる存在だからこそ価値があるのだから。