映画『川の底からこんにちは』の感想 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

川の底からこんにちは

 

 

不況が笑い事だった頃

 

『生きちゃった』『茜色に焼かれる』と最近は徹底的に現代日本の理不尽に叩きのめされる女性を描いていた石井裕也氏を見て闇落ちスゲーって暗い気持ちになっていたが改めて初期作品を見てみたら女性が虐げられるのって彼の一貫したパターンでもあった事を思い出しました。それがまだ時代背景に希望があった頃には爆笑コメディにしか感じられなかったが、ここまで日本社会が腐敗崩壊してしまった今となっては同じ事をやっても社会悪への怒りしか湧きません。この作品はPFFでグランプリを取った若者に制作資金を援助するスカラシップで撮られた作品。訳アリで都会に逃げていた玩具メーカーのOLが父の危篤をきっかけに地元に帰る羽目に。そこは故郷を捨てた彼女への罵詈雑言で満ちていた。この主人公を半ば無理矢理に故郷に帰らせた無責任彼氏が絵に描いたようなダメ男で見ていてムカつきました。それでもマイペースで開き直るヒロインの姿は石井裕也作品で一貫しています。

 

これが笑えなくなってしまったのは石井裕也作品が変わったのではなく社会のアノミー化があまりに深刻化したので我々観客のマインドの方が変わってしまったのかもしれない。「♪来るなら来てみろ大不況、その時は政府を倒すまで、倒せ!政府!」とこの頃から歌ってます。それが当時はどの程度本気だったのか。どちらにせよ彼が若くして社会状況への感度がそれなりに高かった事は伺えます。あまりに理不尽な社会に流され押し出され責任を押し付けられる女性の姿。無能で想像力が欠如した日本ホモソサイティへの憤りは今作にもあったのに当時は気付かず今更ながらにそれを強く感じました。この頃はまだ不況を笑い飛ばせるレベルだったが今となっては日本崩壊カウントダウンって感じで弱者を虐げる虐待社会構造に憤りしかありません。