『出稼ぎ野郎』の感想from映画生活 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

2008-07-10の投稿

出稼ぎ野郎

 

 

フィックフィック

 

パンフには地元のドイツ人が出稼ぎギリシア人をリンチにする話と書かれていたが、ギリシア人が登場するのはクライマックスで、話のほとんどは団地を舞台にした地元ドイツ人たちの青春群像。夫がヒモ状態の中年夫婦の他は人生の目的も持たずにその日暮らしをしている若者たち。愛想の悪いマスターの呑み屋に屯してカードゲームに興じたりテキトーな相手と付き合いセックスするごく普通の若者たち。等身大のリアルなのかもしれないがこれらの日常描写にはドラマ性が極めて薄く退屈ですらあります。ギリシア人にはそれなりに興味を惹かれたがメインに描かれるドイツ人たちはハッキリ云ってどーでもいい奴ら。それでも一応これらの人物を明確に配置しておく事で、ごく普通の若者がちょっとした誤解からリンチに至る説得力が出てはいます。

 

主人公の恋人が出稼ぎのギリシア人に惹かれて悪い噂が立ち始めた矢先、彼らの仲間内でブスキャラの女が彼にレイプされそうになったとデマを流した事で若者たちはリンチに駆り立てられる。ここら辺の誤解が生まれる過程が妙に可笑しい。ブスがギリシア人に卑猥な質問をすると誠実な彼は片言ながらに話に乗って来て「私故郷で妻と”フィックフィック”するよ」(多分エッチする事)なんて腰を動かして見せる。すると仲間の所へ戻ったブスはギリシア人が”フィックフィック”と押し倒して来たと訴える。なぜ彼女が狂言強姦なんてとんでもない意地悪をするのかって所は前半に描かれる仲間内の人間関係からさり気なく伝わって来るのだが、それにしてもギリシア人にしてみればとんだとばっちり。仲間意識の中に潜む劣等感や悪意を露呈された気分。

 

アテネフランセにてファスビンダー映画祭2008