『ブルグ劇場』の感想from映画生活 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

2013-12-22の投稿

ブルグ劇場

 

 

 

私が知る限り人気アイドルの若い男の子たちには一般人よりも童貞が多い。なぜなら仕事とトレーニングに追われて恋愛する暇がないから。多くの女性を魅了する男たちほど女性からの恩恵を受けられないとは世の中は皮肉。彼らはただ与え続けるだけ。そんな宿命が役者にはあるのかもしれない。あくまでも表現とは一方通行だから。この物語に登場する老いた名優も多くの女性を魅了しながらも私的な恋愛では恩恵を受けられない与え続ける男。往々にして恋と仕事は両立しない。名優は若い女性を愛し、彼女は若い役者を愛し、若い役者は名優になる野心を抱く。そんな三角関係のドラマ。私が知る限り人気アイドルの男の子たちは童貞である事を恥じない。それだけ恋愛よりも価値がある仕事にストイックに打ち込めているから。がむしゃらに夢を追う者には自分を想ってくれている女性も見えなくなる。それだけ夢中なだけで悪気はない。ここに登場する若い役者もストイックなだけ。もし成功すれば、やがて老いた時に、この名優と同様に与え続ける事に疲れて全てを捨てて若い頃にできなかった恋愛を取り戻したくもなるだろう。

 

ヴィリフォルストといえば奇跡的傑作『マヅルカ』が最も鮮烈に記憶に残っている。トーキー初期だからこそ違和感なく使えたクライマックスでの多重露光による演出には鳥肌が立ったものです。この作品では監督業に徹していたが、それ以外の作品では自ら脚本を書いている。その内容のほとんどはウィーンの舞台を背景にしたオーストリアの役者出身の彼らしい内容と云えます。そんな訳でどの作品も私的な実感がこもっているので説得力があります。そんな作品群の典型という訳でこの作品は彼の代表作と呼ばれています。良し悪しは別として。私的な脚本の強みとして他のフォルスト作品と同様に質は高いけれど一番の傑作って訳じゃない。老いた名優と役者志望の若者の苦悩には彼ならではの思い入れの強さを感じる訳だが。その一方で女性キャラが夢を追う男たちに振り回され、それでも男たちをサポートしようとする。まるで思い通りに生きようとする男の尻拭いをするように。女性が間に入る事で男同士の関係もとりなされる。彼の作品の女性は寛大。彼の女性に対する罪悪感みたいなものも感じます。