2007-12-13の投稿
間諜最後の日
鼻を鳴らす愛犬
先日バーネット特集で見た『諜報員』は一部では007シリーズのパロディ版と呼ばれてるようですが、本家よりも20年近く前にパロディ版ができるなんてあり得ないし、扱っている情報戦も東西冷戦ではなく対ナチスの第二次世界大戦。そのネタで当時最も有名だった映画といえばむしろこの作品ではないだろうか。当時はまだ英米もロシアも反ナチスって意味じゃ似た立場。ただ、この作品に描かれるスパイは直接潜入して情報を得る第一線ではなく、隣国で情報を得たスパイに接触して本国に報告する側の人間が主人公。それでも成り行き上、第一線へと巻き込まれる訳だが。途中までは誰がドイツ側のスパイなのかって所でハラハラさせてくれますが、伏線無視なドンパチで一気にたたみ込むあたりは少しばかり乱暴過ぎ。
ただ敵側のスパイと踏んだ老人を殺害しに山へ行くあたりのカットバックは秀逸。主人公は手を下す事をためらい、相棒が殺害する現場を遠くから望遠鏡で見ている。一方、老人の自宅では女スパイが老人の妻の相手をしている。すると突然、老人の愛犬が鼻を鳴らして外に出ようとする。主人の危機を察したのだろう。入り口のドアを開けようと必死。その犬の声が山にまで響く。実際には届く訳がない声だが、非道な殺害シーンにその声が被る事によって、女スパイと主人公の罪の意識を強烈に印象付ける。そこで失望したスパイたちが任務を放棄して終われば傑作だっただろうに、そこから先は無駄なアクションばかり。大衆受けする要素を詰め込み無理矢理明るい方向へと持って行った事が仇となったかのようです。
