『フォンターナ広場』の感想from映画生活 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

2013-05-04の投稿

フォンターナ広場 イタリアの陰謀

 

 

 

とにかく硬派でした。かつての熊井啓を思わせる切り口です。近年イタリアの社会派として商業的にも最も売れ筋のジョルダーナ監督の新作。社会派とは云っても結構古い時事を扱う事も多くて、特に学生闘争が盛んだった政治の季節を好んで背景に使う事が多い。今回も正にその時代の話。いわゆるフォンターナ広場爆破事件の謎に迫るというタイプの作品。ところが今回は今までになく超硬派なのです。徹底的に個人のドラマを排して公の出来事を追う。史実に忠実でありながら危険かつ大胆な推論を匂わせています。

 

未解決事件を追った硬派な作品といえば熊井啓が沢山撮っているが、ふと連想したのはオリバーストーンの『JFK』でした。主人公が公安の捜査官で、事件直後に謎を追うという構成が似ていたからでしょう。それと体制側の陰謀と隠蔽工作という点。大胆な推論とは体制側が黒幕という説。当時、国家への脅威と云えるほどにヒートアップしていた反政府活動を鎮圧するためには、パルチザン側を悪者にしてしまうのが一番都合が良い。それは戒厳令で憲法を一時的に凍結しクーデターを目論む勢力を一掃する大義名分にもなる。パルチザン側の犯行として捜査していた主人公は彼らを犯人と考えると、どうしても証拠が揃わず話のつじつまが合わず、その大胆な陰謀説へと行き着く。

 

政治闘争が加熱し爆弾テロが頻発していた政治の季節には迷宮入りして未だに真相は藪の中という事件が多いが、一般的な推論としてはテロ組織同士の抗争や反体制活動によって起きたという説が有力。左派だろうが右派だろうが、どちらにせよパルチザンの卑劣な行為として片づけられている。そこに今作はアンチテーゼを投げかけている。これまで『ペッピーノの百歩』でも『輝ける青春』でもパルチザン側に辛辣な視点で描いていたジョルダーナだが、今回は体制側を疑う、云わばパルチザンに近い立場をとったって訳だ。説としてはなかなか面白いけど、この映画自体は硬派過ぎて娯楽性に乏しかった。