『牢獄処刑人』の感想from映画生活 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

2019-12-31の投稿

牢獄処刑人

 

 

汚職国家

 

フィリピンのノワールアクション。タイトルの通り囚人のふりをした殺し屋の物語。老いたベテランの殺し屋が若手に技を伝授するというサイモンウェストの『メカニック』やカソヴィッツの『アサシンズ』でも見かけたタイプのノワールだが、それよりも事件を追う刑事側のドラマに惹かれました。この殺し屋たちを追ううちに政界とも繋がりのある若手エリート刑事が黒幕組織の中に自分の義理の親などがいる事に気付き始める。フィリピンだけでなく発展途上国のノンフィクションの多くは腐敗が権力の中枢近くまで及んでいるなんてネタは珍しくないだけに、やたらとリアリズムと説得力があります。それこそメイレレスの『シティオブゴッド』みたいにノンストップなノワールアクションであるはずなのに背景は全くもってリアリズム社会派って感じ。

 

ヴィジュアル的にも臭いそうな位に汚れた街を背景に捉えて、あえて人物を情景の中に埋没させるような構図が多くて、ロケ場所への拘りみたいなものを感じさせます。むしろ、その街自体と腐敗した組織の構造自体を見せる事にこの映画の目的があるようにすら思えます。ここに登場する殺し屋も刑事もシステムの中で飼い慣らされ刃向えば抹消される。それぞれの保身の為にシステムは回り続ける。そこにあるヴァイタリティは実に無慈悲で冷酷です。フィクションのヴァイオレンスアクションとしては月並みな内容ではあるが背景にはノンフィクションの社会派さながらのリアリズムを感じます。