『長江の夢』の感想from映画生活 | アキラの映画感想日記

アキラの映画感想日記

映画を通した社会批判

2005-07-01

長江の夢

 

ダムはムダ

 

アジアプレスをはじめとするドキュメント製作事務所の多くは、まるでボランティア団体のような経営体勢です。消耗品を除く機材だけを貸し出し、現場までの旅費や滞在の為の生活費は、スタッフが自腹を切っています。現地で撮った映像が報道に売れれば収入はありますが製作費はおろか安定した給料みたいな収入はありません。その代り、個々が自由に撮りたいモノを撮れる訳です。製作費で顎足は勿論、飛行機のマイルや消耗品購入時のポイントまで着服できる代りに、クライアントに従う我々通常の職人とは製作にかける意識の高さが違います。そういった意味でこの作品は、報道に売れそうにない内容である分、中途半端に商業的だった”LittleBird”よりドキュメントらしいスタンスを感じられる作品でした。

 

孫文の時代から企画されていた長江の発電用ダム建設。近年、実際に着工された事により川沿いの地域に住む農民達は移転を迫られている。この作品では農民達の立場から移転に伴う様々な弊害を丁寧に追っています。籍が都市に移れば一人っ子政策の対象家族とされるので体が弱く子供を堕胎すると断命の危険があるにも拘らず中絶手術を受けさせられる妊婦。就職斡旋にすがる夫。地方戸籍に引け目を感じて婚期を逃がしたオールドミス。介護をするはずの息子達の移住で途方にくれる老夫婦。じっくりと撮っている力作だけに、まとまり方として少々テーマが散漫で抽象的なっている事が残念でした。