『蛇イチゴ』の感想from映画生活 | アキラの映画感想日記

アキラの映画感想日記

映画を通した社会批判

2009-11-12の投稿

蛇イチゴ

 

 

ディア宮迫

 

嘘で塗り固められた家族愛の物語。義理の父の介護で神経をすり減らす母。表向きにはおじいちゃんとは信頼関係があると云いながら、本当は早く死ねと願っている。心の広い父。表向きには会社の重役として毎日多忙な日々だが、本当はとっくの昔にクビになって今じゃ借金まみれ。そんな家族を救うべく現れた兄は腹黒く遺産を根こそぎ持ち去ろうとしている。かつて大学の授業料をネコババし妹のショーツをブルセラに売って家族から感動された男。そんなどうしようもないロクデナシである事を知りながら憔悴しきった家族は願いを託す。こんなはちゃめちゃな家族の犠牲になるのは真面目に教職についていた妹。家族が兄を信じようとする中、ひとりだけ猜疑心でいっぱい。

 

どこにでもあるような幸せ家族の裏の顔を暴いて、更にその奥にある意外な良心に迫る秀作。人の心の裏と表のコントラストが、いかにも西川監督らしい良質なデビュー作。キーとなるインチキくさいキャラにお笑い芸人を使っている所が後の『ディアドクター』と共通している。田舎や老人介護など本当は古い物から逃げ出したがっている人々の姿は今の所、全作に共通しています。外から見れば温かく羨ましい環境に見えても、その内実は腐っている。黒木和雄の『祭りの準備』を思わせるエグイ面がどの作品からも臭うが、そこをモロに描こうとはしない。それが彼女の隠し味。