2010年03-10の投稿
ひとりで生きる
シベリア抑留が背景
ビデオ化されてなかったので未見だったカネフスキー作品を特集のアンコール上映で拝見。代表作『動くな死ね蘇れ』と同様に反抗期の青年の話でありながらストイックな印象よりも奔放さが強調された心地よい内容。悪徳教師と喧嘩して学校をドロップアウトし警察から逃げ行く先々で地元のチンピラとごたごたを起こす不良青年。彼の身を案じる幼馴染みの少女。彼女との関係はプラトニックじゃない。大切に思われても大切に思わない。たまに抱く女って程度。ハードボイルド好きが憧れる男性像。ただ彼は非常に図太い人間にも見えるが、生きようとする真剣さという意味ではストイック。
彼の故郷には多くの日本人が収監されている。主人公の幼馴染みは彼らを人殺しだと罵る。時代背景に関して明確にした物語ではないが、これはきっと大東亜戦争以後シベリアに抑留された日本兵の印象が投影された背景作りなのだろう。ロシア側から見ると日本側が意識するほど大した関心を持たれていないという印象。余所者の犯罪者って程度。主人公は彼らと親しくした事を責められたりもする。だが彼は単に純粋に生きているだけ。純粋な人間には一般的なモラル観なんてクソ食らえな訳だ。内容のほとんどは彼の生き様を単に軽快に描いた劇映画だが、突き抜ける部分もある。象徴的な夢の描写やカメラに向かって語る切実な訴えにはドキッとさせられます。それはまるでロシアに対する日本のあり方。大国ロシアにとって我々日本人は踏み潰す価値もないクズだから見逃してくれってな卑下した命乞い。
