ワゴン車 | 台本、雑記置場

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●ワゴン車

 佐々木君の住む地域には嫌な噂があった。
 ワゴン車に乗った男性数名が女性を連れ去り、森に拉致して乱暴を加えるというものだ。

 ある日、佐々木君は車の運転中に奇妙な光景を目撃した。
 ワゴン車の上に女性と思しきものがいる。
 女性はまるで重力から解き放たれたように車にくっついていた。
 奇妙なことに、その女性には色がなかった。ただ、恐ろしい鬼の形相でワゴン車の上で揺れているのだ。
 ワゴン車の主は気づいていないのか、速度を変えることもなく一般道を森の方へ走っていた。
 佐々木君はワゴン車の後ろに回るとクラクションを数度鳴らしたが、ワゴン車の運転手に気づいた様子はない。
 ワゴンは真直ぐ森の方へ走っていく。
 やがて一般道を外れ、森の奥深くへと続く道を進んでいった。
 佐々木君は迷ったが、後をついていくことにした。ここまで追いかけていけば、ワゴンの運転手も自分の合図に気が付くだろうと思ったのだ。
 だが、ワゴンは森が広がる山の裾野をまっすぐ走っていく。
 辺りは木々に覆われた道である。
 佐々木君は時折合図を送りながら、ワゴンを追走した。
 しかし、ワゴン車からの反応は全くない。
 あきらめて、どこかでUターンしようか?
 そんなことも思ったが、狭い森の道ではそんなスペースもない。
 女性の衣服を纏った車上の女性は、ピタリと張り付いたままである。
 やがて視界が開け、深い森の奥でちょっとした広場に出くわした。
 周囲を見回した佐々木君はふと気が付いた。
 その広場は森の奥にあるにも関わらず、酒の空き缶や煙草の吸い殻が落ちている。まるで誰かがたむろしていたような痕跡があるのだ。

 ――まさか連れ去り事件の現場ってこの場所なんじゃ……。

 佐々木君がそう考えている間も、ワゴン車はさらに森の奥へと進んでいき――消えた。
 その後、もの凄い轟音が佐々木君の車内にまで響いた。
 車を降りた佐々木君がワゴン車の進路を確認すると、車は深い谷底へと落下していた。
 立ち尽くす佐々木君の横に谷底からふわりと舞い上がった影が立つ。
 あの色のない鬼の顔をした女性が、佐々木君の横を通り過ぎた。
 森の出口へと、すぅっと音も立てずにすべるように去っていく。
 身震いした佐々木君は救急に通報を、と考えたが森の奥は電波が入らなかった。
 佐々木君は電波の入る所まで慌てて引き返し、救急に連絡し車が谷底に落下した事を通報した。

 その出来事からしばらく経つと、連れ去りの噂はピタリと聞かなくなった。
「車に張り付いてた女性の鬼は、被害者たちの怨念が形になったものじゃないかと思うんです」
 ワゴン車に乗っていた四人の男性の名前を、佐々木君は死亡事故のニュースで知った。

 

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