ブラック企業のススメ | 台本、雑記置場

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ブラック企業のススメ


CAST
・萩原 太一(はぎわらたいち)
 ブラック企業に入社して2年目の青年。仕事のきつさにハイになっている。
・峰岸 綾子(みねぎしあやこ)
 ブラック企業で後輩を取り仕切る出来る先輩。笑顔で残酷なことを言う。
・湯沢 義男(ゆざわよしお)
 ブラック企業の社長。取引先に無理難題を押し付けられ続ける社長兼社畜。
・藤間 純(とうまじゅん)
 ブラック企業にやってきた新人。打たれ弱く根気も無い。


~劇中表記~
太一:♂:
綾子:♀:
義男:♂:
純:♂:


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


太一:ふっ…今日は始発を使い、始業3時間前に到着だぜ。今日という今日こそは
  会社に一番のりだ!とぅ!!
綾子:あら、太一君おはよう。朝から元気ね。


太一:あ、綾子先輩!?どうしてこんなに早く…
義男:はっはっは。今日も太一君はいきおいがあっていいねぇ。


太一:しゃ、社長まで!…ぐぅぅ、始発で来たというのに、どうして二人は…。
綾子:甘いわ太一君。私は車通勤よ。時間なんて思うがままだわ!


義男:ふふふ…私ほどになると、会社に泊まり込み一週間と三日目だよ。
綾子:さすがは社長!十日と言わないところも素敵ですわ!


義男:よしてくれたまえ、綾子君。少しでも長く感じさせないための工夫だよ。
太一:なんということだ…さすがは先輩!さすがは社長!!


義男:さあ太一君、もう始業の2時間半前だぞ。グズグズしていないで早くデスクに
  つきたまえ。
太一:はい!萩原太一、今日も会社に尽くします!就業、開始!


綾子:ふふふ。太一君も企業戦士らしくなってきたわね。かっこいいわよ。
太一:いえ、自分なんてまだまだです!


義男:ふむ…まだ藤間くんが来ていないな。彼は新入社員だから仕方がないか。
綾子:これからしっかりと教育していかないといけませんわね。手とり足とり頭とり…。


義男:頭を取って働け、とはよくいったものだね綾子君?
綾子:新人君には仕事のこと以外を考える頭はいりませんので。うふふ、教育が
  楽しみですわ。


太一:しょうがないですよ、最初は誰だってきついもんですから。
義男:うむうむ、去年は泣いていた太一君も、今じゃすっかり立派な先輩だな。


太一:むかしの話はよして下さい。今はもう立派な企業戦士見習いです。
  社員ナンバー003、欲しがりませんボーナスは!タイムカードは定時で切ります!
  萩原太一です!
綾子:キラキラしているのに生気の無い独特の瞳ね。いいわぁ…。


義男:さあ、今日は効率よく仕事をこなさないと、終電を逃すぞ。二人とも、しっかり
  やってくれたまえよ?
綾子:あら社長。終電なんてどうでもいいですわ。そうよねぇ、太一君?


太一:はい!朝日が昇るまで仕事を出来る幸せもあると思います!
義男:ようし。私は諸君らよりも多く働くと約束しよう。君たちもしっかりと私に
  ついてきたまえよ?


綾子:はい、社長!
太一:全ては会社のために!



綾子:あのガキ…もとい。藤間君、来ないわね。
太一:綾子さん、素がはみ出ています。


綾子:あらやだ私としたことが。んもう、だめねぇ藤間君ってば♪
義男:う~ん。もう始業1時間前だぞ。どうしたんだろうねぇ。いやぁ、心配だ。


太一:携帯も繋がりませんね。寝ているのかな?
義男:寝ている?綾子君、彼の家から会社までの距離は?


綾子:はい社長。電車で20分ですわ。もしもまだ寝ているとしたら、良い根性を
  していやがりますわね。
義男:いかんなぁ~。まさかうちの社員ともあろうものが、始業時間ぎりぎりに
  くるつもりじゃあないだろうね?これは良くないよ。


綾子:…確認しました。彼の仕事カバンと社員証に仕込んだGPSは自宅から動いて
  いませんわ。これは寝ていようが起きていようが、由々しき事態ですわね。
太一:仕事の効率的にはロスですが…僕が迎えにいきましょうか?


綾子:太一君は優しすぎるからダメよ。ここは私がいくわ。
太一:ですが、綾子さんが迎えにいってしまっては、時と場合によっては藤間君が
  再起不能になってしまうかも…。


義男:忠実な社畜…ごほん、熱心な企業戦士はわが社の宝だ。ここは我々全員で
  彼を迎えにいこうではないか。
綾子:しかし社長、それではあまりにも仕事に影響が出ますわ…。


義男:幸い今日はしめ日が当日の仕事は無い。せいぜい1日2日寝ないで働けば間に合う
  計算が立つ。簡単なものだろう。
太一:社長…!なんて社員思いなんだ…!この萩原太一、社長にどこまでもついて
  いきます!!


綾子:さすが社長ですわ。末端の社員にまで暖かい心配り。では皆で藤間君を拉致、いえ
  迎えに行きましょう。
義男:うむ。企業戦隊ブラックワーォ、出動だ!



純:いやだ…もういやだ!あの会社はおかしい。なんで皆あんなに喜々として早出残業、
  しているんだ…。残業代なんて勿論無いし。ぼくはあんなところにもう行きたくない。
  普通の仕事がしたい…。
太一:働かない社員は消毒だぁぁぁぁぁ!


純:うわぁぁぁぁぁぁ!?な、なんだぁ!?
義男:はっはっは、太一君ナイス突撃だ。


綾子:念のために従業員の家の合鍵をつくっておいて正解でしたわね。
純:ひぃ!社長!そ、それに太一先輩に綾子先輩…


綾子:藤間君…。遅いから、迎えに来たわよ?
純:い、いやだ!ぼくはもうあの会社で働きたくない!


太一:何を言っているんだ藤間君!面接の時の元気はどうした?
純:だって、おかしいじゃないですか!早朝から深夜まで皆してニコニコニコニコ仕事を
  して…気味が悪いですよ!


綾子:だいじょうぶよ、安心して。ちゃんとタイムカードは午後六時できってあるわ。
義男:労働監督署にばれなければ、きっちり優良企業だよ、うちは。


太一:そういうことだ!さあ、今からならまだ始業時間に間に合う。一緒に出社しよう!

純:初任給だから少ないと思ったら、勝手にタイムカード切ってたんですか!?
  犯罪だ!違法労働だ!こんなこと許されるわけがない!


綾子:ねぇ、藤間君。
純:なんですか!?


綾子:あなたには今、2つの選択肢があるわ。
純:続けるか、辞めるかですか?それなら辞めます!


綾子:違うわ。働いて給料をもらうか、働いて給料をもらわないかよ!
純:なんじゃそりゃああああああ!


義男:藤間君…君が今抜けたら、君の受け持ってた仕事、止まっちゃうねぇ?
純:そ、それは…仕事が多過ぎるんですよ。


義男:止まったら、仕事に損害がでるねぇ。いくらになるかなぁ~。君、それ払えるの?
純:うっ…、でも!このままじゃ死んじゃいます!


太一:誰よりも遅く来て、誰よりも早く帰っている君がいうのか!?
純:それでも8時出社11時退社ですよっ!皆さんがおかしいんですよ、何者ですか!?


太一:何者と聞かれれば…
綾子:答えてやるのが企業の情け…


義男:我々は…仕事があれば笑顔で徹夜、ブラックブラック!とぅ!
純:げふっ!


綾子:仕事が無ければ探して夜明け、ブラックピンク!えーい!
純:ぐはっ!


太一:365日、会社の味方!ブラックレッド!どおりゃあ!
純:ごっほぉ!


太一:皆揃ってぇ~
義男、綾子、太一:企業戦隊!ブラックワーォ!!


純:なんでポーズとるたびに僕のことを殴ったんですか!?
綾子:気持ちの問題かしらね。


純:わけがわからないですよ!とにかく、無理です!ぼくは出社しない!
綾子:ねぇ。藤間君?


純:なんですか急に優しげな声出して!ぼくはもう無理なんです!
綾子:無理って言葉はね。うそつきの言葉なのよ。


純:え?なんでですか?
義男:無理と思うから、無理というから無理なんだよ。


純:いやだって物理的にきついですよ。
太一:君は寝ないで仕事に向かったか?倒れても這って働いたか?


純:そんなこと出来るわけないです。
綾子:どんな状態でも仕事は出来るわ。這ってでも出来る。それなのに無理?


純:這ってたらもう無理してるじゃないですか!
義男:藤間君、這ってでも出来たら無理じゃないんだよ。


純:なぜです?
太一:だって、這ってでも出来たら、出来るんじゃないか。無理じゃない。
  無理っていうのは出来ないことをいうんだよ。這ってでも、血を吐いてでも出来たら
  それは無理じゃあないんだ。わかるね!


純:まったくわかりません!
綾子:う~ん、どうしてもわからない?


純:わかんないですよ!めちゃくちゃです!死んじゃいます!
綾子:そっかぁ~。わからないか~。


純:な、なんですか?
綾子:じゃあ~。わからなくっていいから、理屈をこねずに働けカス♪


義男:無理しないとダメだって言うなら、無理したまえ♪
太一:出来ない事なんて無いよ。どうしても死ぬなら、仕事してから死のう♪


純:目…目が怖い…誰か…!ひぃ…つかまった!?
太一:さあ、今日も一日張り切って仕事をしよう!朝日に…いや、会社に向かって
  全力疾走だ!


綾子:さあ、行きましょう!私達の空間へ!
義男:私はいつでも、社員たちを会社で待っているよ!


純:は~な~し~て~…!


…おまけ…


綾子:仕事はとっても大切です。
義男:だけど働いている皆の心身の健康は、もっと大切。
太一:皆、自分を大切に、無理をしないで仕事を頑張ろう!
純:だったらぼくを帰して下さいよぉ~!



終わり





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