思い出の抱き締め方 | 台本、雑記置場

台本、雑記置場

声劇台本を書いています。また、随時怪談話を募集しております。皆様が体験した怖い話、聞いたことのある奇妙な話、ぜひお気軽にお寄せくださいませ。
・連絡先・
Twitter:@akiratypeo913
mail:akira3_akira3★yahoo.co.jp ★→@に変えてください

思い出の抱き締め方


登場人物
・吉瀬 沙織(きせ さおり):♀
 祖母を母親代わりに育った女性。大学を卒業後、実家をはなれ一人暮らしをして働いている。
・吉瀬 正志(きせ まさし):♂
 沙織の父。温和な性格で、柔軟性にとむ家族思いの父。
・吉瀬 佳代子(きせ かよこ):♀
 沙織の祖母。幼くして母をなくした沙織の母として沙織を大切に育てる。
・成瀬 佳奈(なるせ かな):♀
 突如沙織の家を訪れた、破天荒な性格の女の子。佳代子とかぶり。


劇中表記
沙織:♀:
正志:♂:
佳代子・佳奈:♀:


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


~16年前~


沙織:うわぁぁぁぁぁん!おばあちゃん、あたしが欲しいっていったのこのお人形さん
  じゃないよー!ずっと楽しみにしていたのにぃ~!!
佳代子:えっ…?ご、ごめんね沙織!誕生日プレゼント、このお人形がよかったんじゃ
  なかったっけ?


沙織:ちがうよぉ…。この子のお友達のくまさんのぬいぐるみだよぉ…うわぁぁん!
佳代子:ごめんね、ごめんね!おばあちゃん、こういうのわかんなくって…。


沙織:もういい!おばあちゃん嫌い!ずうっと約束してたのに、おばあちゃん大嫌い!
佳代子:沙織!まって!沙織…ごめんなさいね。


…現在…


SE:目覚まし時計


沙織:ん…、夢…?あれは入学祝いの…。なんで今更…。誕生日が近いから?
  はぁ…子供だったなぁ。わかるわけないよね、おばあちゃんに。
  流行っていた
キャラクターの人形なんて…。
  一生懸命さがしてくれたのに。私、結局あのときのこと、おばあちゃんに謝って
  いないままなんだなぁ…。どうしてずっと…。もう、今からじゃ…。


沙織M:お母さんが私を産んですぐ他界して、私はずっと祖母に育てられた。
  寂しくはなかった。若い祖母はまるで母親のようで、私をとても大切にしてくれて
  いたから。いつもそばにいてくれた。そんな祖母も私が就職して上京した数か月後に、
  脳の病気で入院した。けれど、私はいまだにお見舞いにいけていない…。
  仕事は確かに忙しかったが、会いに行けないほどではなかった。怖かったのだ。
  父から伝え聞く祖母が。私の知らない祖母になってしまっていて…。


正志:もしもし、沙織か?こんな朝から電話をよこすなんて珍しいな。
  なにかあったのか?
沙織:ううん。今日ね、夢を見てさ。


正志:なんだ?怖い夢でもみて父さんに電話か?
沙織:そんなんじゃないよ。…あのね、おばあちゃんの夢をみたの。


正志:…ああ、おばあちゃんの夢か。それで、どうした?
沙織:うん、今おばあちゃんの具合、どうかなって。


正志:はっきりいって良くないな。今だに俺のことすらわからないみたいだ。
  看護師さんがいうには、たまに正気になるらしいんだけど。いつもは俺のことさえ
  もうわからないんだよ。
沙織:…そうなんだ。ねぇ、私やっぱりお見舞いにいったほうが…。


正志:でも、怖いんだろう?今までのおばあちゃんじゃなくなってしまったみたいで。
沙織:うん…。冷たい事かな?


正志:そんなことはないよ。お前は自分の中の、お母さん代わりだったおばあちゃんを
  大切にしているんだろう?それが知らない人になってしまったようで怖いんだろう?
沙織:…。私のことを他人のように接されたらって思うと、どうしても怖くて…。


正志:気持はよくわかるよ。俺もな、もう息子のことすらわからないおばあちゃんに
  会いに行くのはやっぱりつらい。
沙織:そうだよね。でもお父さんにばかり苦労をかけて…


正志:そんなことは無いよ。父さんもほとんど病院の皆に任せてしまっているしね。
  大切な存在なのは変わらない。でも、違う人のようになってしまっている。
  その姿を見るのは苦しいよ。   
沙織:そう…だよね。


正志:お前は仕事もはじめたばかりだし、とても忙しいのだろう。今はこれ以上、つらい
  ことを背負うことはないよ。お前は、ずっと大好きだったおばあちゃんの思い出を
  大事にしているからこそ会えない。その思いは父さんにはよくわかる。
沙織:お父さん…。ありがとう。お父さんも無理はしないでね。


正志:ああ。…そういえば、看護師さんがいっていた。たまにな。おばあちゃんが
  放心状態みたいになるって。脳波とかを検査しても異常はないみたいなんだけど。
沙織:それって…危険じゃないの…!?


正志:いや、嫌な話だが、元々いつなにかあってもおかしくないんだ。けど、どうもそういう
  状態になっているときは、むしろ身体は調子はいいらしい。
沙織:…不思議ね。どういうことなんだろう。


正志:それは病院でも調べてくれているみたいなんだが…。まあ、それについてもなにか
  わかったら連絡する。沙織、お前も思いつめたり、無理はするんじゃないぞ。
沙織:お父さん…。ありがとう。


正志:ああ、それじゃあな。たまにはうちにも顔をだせよ。
沙織:うん。じゃあね!


正志:うん、また。
沙織:おばあちゃん…。先生は難しいっていっていたけれど、きっと良くなって
  くれるよね…?



沙織:はぁ…今日は仕事が遅くなっちゃった…。早く帰ってゆっくりしよう…。
  それにしても週末は人込みがすごいなぁ…。きゃ!?
佳奈:いったぁ…。ごっめーん!だいじょうぶ!?


沙織:あ、いえ、こちらこそぼーっとしちゃってて。あなたこそだいじょうぶですか?
佳奈:あたしは平気!ほんとごめんね。


沙織:いえ。気にしないで下さい。…あれ?どこかでお会いしたことありましたっけ?
佳奈:え?う~ん、あたしもどこかであなたにあったような…。でも思い出せないなぁ。


沙織:そうですよね。なんだかいきなりごめんなさい。…それじゃあ。
佳奈:あー、待って待って!


沙織:え?どうかしましたか?
佳奈:実はね、あたしちょっと今わけありで、今日泊まるところがないんだ。いきなりで
  こんなことお願いするのは申し訳ないんだけど…今日あなたのおうちにお邪魔しても
  いいかな…?


沙織:え?そんなこと突然言われても…困ります。
佳奈:そこをなんとか!ね!ほら、お互い知り合いかもしれないしさ。


沙織:だけど…。あの、お名前は?
佳奈:あたしは成瀬佳奈だよ。あなたは?


沙織:私は吉瀬沙織です。…名前に聞き覚えもないし、やっぱり勘違いですね。
佳奈:そっかなー。あたしはどこかで聞いた名前なような?


沙織:とにかくごめんなさい。さすがに知らない人をいきなり泊めるわけには…。
佳奈:そこをなんとか!お願いっ!荷物も大きくって大変なの!


沙織:…でも。
  (なんだろう。初めて会う人なのにどこか懐かしいような。不思議と安心するような)
佳奈:おーねーがーい~!なんだかあなたに親近感を感じちゃってさ!


沙織:…私も、初めてあったはずなのに、なんだか懐かしい。…今日だけですよ?
佳奈:いいの!?ほんとに!?ありがとー!じゃ、早速おうち行こ!


沙織:…あ、待って!…あれ、どうしてうちがこっちだってわかるの?
佳奈:え?ああ、勘よ、勘!当たってた?


沙織:うん。びっくりしました。
佳奈:えへへ~、昔っから勘はいいのよあたし。世間知らずで流行りには疎いけどね。


沙織:そうなんですか?おしゃれに見えるけど…。
佳奈:そんなことないよー。あ、敬語とかやめて?気楽にお話しよ!


沙織:え、あ…はい。
佳奈:まだ固い~。じゃ、おうち案内して!
沙織:う、うん。こっちよ佳奈さん。



佳奈:おっじゃましま~っす!綺麗な部屋!
沙織:そんなことないよ。散らかっているし。


佳奈:ううん。憧れちゃうな、こういうお部屋。
沙織:そうかなぁ。あ、今飲み物もってくるね!


佳奈:は~い。ありがと!
沙織:はい、どうぞ。…あれ?電話だ。


佳奈:電話?彼氏から!?
沙織:彼氏なんていないよ。お父さんから。


佳奈:ああ、まさ…お父さんね!
沙織:…え?


佳奈:あ、なんでもないって!ほら、はやく電話でないと。
沙織:…う、うん。(今、正志って言いかけた?そんなわけ、ないよね…)
  もしもし、お父さん?どうしたの?


正志:沙織か?夜にすまないな。またおばあちゃんが意識が無くなったそうで…。
  命に別状はないらしいが…
沙織:え!?おばあちゃんが?うん、わかった、すぐに…。


佳奈:ど、どうしたの!?
沙織:私のおばあちゃん、今調子がよくなくって…意識不明なんだって!


佳奈:え?そうなの…?そんな…。うっ…、ちょっと…トイレに…
沙織:え?だいじょうぶ…?場所は…いっちゃった…。


正志:どうした沙織?聞こえるか?
沙織:うん。ちょっと人が来てて…。それでおばあちゃん、身体のほうは?


正志:それが、心臓はしっかり動いているらしい。だから、すぐに来る必要はない。
  ただ、容態が急変するかもしれないから、出る支度だけはしておいて貰っていいか?
  …あれ?先生、なにか?はい…はい…。
沙織:お父さん!どうしたの!?おばあちゃんになにか…


正志:いや、急に意識が戻ったらしい。それもしっかりとな。
  少し眠りたいって寝たそうだが、脳波も元に戻ったそうだ。
沙織:そう…、良かった。ほんとに良かった。


正志:しかしあんまりにも急だ…。心配だし父さんはもう少し病院にいるから、沙織は
  そこにいてくれ。何か必要なものがあれば買ってきてもらう事もあるかもしれない
  からね。

沙織:お父さん、お疲れ様…。わかったわ。連絡待ってる。


正志:ああ。けどちゃんと休んでくれよ。先生がいうには随分安定してきたそうだから。
沙織:わかった。でもお父さんは…?


正志:仕事の都合で、今後沙織に色々頼むこともあるかもしれない。そのためにも今は
  ゆっくりしていて欲しい。
沙織:お父さん…ありがとう。


正志:ああ、それじゃあ。…あ、そうだ。
沙織:ん?


正志:看護師さんに聞いたんだけどな。おばあちゃん、容態が悪化する前、機械なんて
  全然詳しくないのに、看護師さんに頼んでインターネットでなにか探していたそうだ。
沙織:おばあちゃんが?なんで…。


正志:それはわからないが…。まあ、おばあちゃんが自由に使えるお金は全然ないし、
  何か気晴らしになっていたなら…。それはいいさ。一応、伝えておこうと思ってな。
  それじゃあな。
沙織:おばあちゃん…何をしていたんだろう。…もとのおばあちゃんにきっと戻って、
  それも教えてくれるよね?…あれ?佳奈さんはどこに…?


佳奈:う…ん…。
沙織:佳奈さん?こんな廊下で・・・寝てるの?佳奈さん!起きて!


佳奈:え?あ。いっけない!疲れてて、ついつい。てへ。
沙織:廊下で寝ちゃうなんて、随分疲れてるのね。もう休む?


佳奈:う~ん、そうしよっかなぁ…クッションかりていい?
沙織:ベッド使ってくれてもいいけど…。


佳奈:それは悪いなぁ…。あ、それとも一緒にベッドで寝る?
沙織:えええ…。それは…


佳奈:いいじゃ~ん!
沙織:ちょっと遠慮したいかなぁ…。


佳奈:ちぇ~。あ、沙織はお風呂入いらないの?
沙織:入るけど、佳奈さんは?


佳奈:あたし、つかれてるからパスで。
沙織:そっか。じゃあ、先に休んでいてくれていいからね。


佳奈:は~い!


…お風呂場…


沙織:佳奈さん…不思議な人。はじめてあったのに、そんな気がしない。
  なんだかなつかしいような…。なんでだろう?
佳奈:おじゃましまーっす!


沙織:きゃああ!佳奈さん!?
佳奈:えへへ~、沙織、背中流してあげる!


沙織:そんな、いいから…。もうあがるから、佳奈さんゆっくり入って!
佳奈:いいから~。ほらほら背中向けて!


沙織:佳奈さん、強引なのね…。はぁ。
佳奈:…大きな背中ね。


沙織:えええ?私、小柄なのに?
佳奈:え、あ、そうだよね~。あはは。人の背中を流すなんて事、普段無いからさ。


沙織:私も、昔おばあちゃんに流してもらった以来。なつかしいな。
佳奈:…おばあちゃんは、幸せね。


沙織:え?
佳奈:電話。眠る前に少し聞こえちゃった。こうして心配してくれるお孫さんがいて。


沙織:でも、私…お見舞いにも全然いけてなくって。
佳奈:けど、とってもおばあちゃんのこと思ってるんだなって伝わった。きっと、
  おばあちゃんにも伝わっているよ。


沙織:そうなのかな?でも、言葉にも出来なくて。
佳奈:きっと、思いって伝わると思うんだ。理屈じゃないよ。


沙織:…佳奈さん。ありがとう。
佳奈:さ、流し終わったよ!湯船入って、出たらお酒飲もうよ!あたしの荷物に梅酒
  入ってるから!
沙織:ええ!?う、うん…別に、いいけど…。押しが強いなぁ…。



佳奈:それじゃあ二人の出会いを祝して~、かんぱ~い!
沙織:乾杯。私梅酒好きなんだ、嬉しいな。


佳奈:だと思った。沙織、むかしっから梅ジュースが好きだったもんね。
沙織:え!?なんで知ってるの…?


佳奈:え、ああ~。なんちゃって!そんな気がしたの!
沙織:そんな気がしたって…ええ~?


佳奈:ささ、いいから飲んで飲んで!
沙織:ちょ、ちょっとちょっと!そんなにつがないで~。


佳奈:ふふ、嬉しいなぁ。
沙織:なにが?


佳奈:こういう飲み。憧れてたんだよね。
沙織:そうなんだ。友達沢山いそうなのに。


佳奈:なんかね。特別な気分なの。さぁ、今日は飲むわよ~!
沙織:佳奈さん、ペースはやすぎ!
佳奈:沙織ももっと飲みなさ~い!



SE:電話着信音


沙織:う、ん…。電話…?あ、もう朝!?寝ちゃってたの?もしもし?
正志:沙織か?すぐに病院にきてくれないか!?おばあちゃんの容態がまた急激に悪化
  しているんだ!


沙織:え!?そんな…わかった!すぐいくね!
正志:ああ、待っている!それじゃあ、病院で!


沙織:おばあちゃん…。早く出なきゃ!佳奈さん!佳奈さん!? …いない?
  いったいどこに?帰ったの?でも荷物がおいたまま…?これは…メモ?
佳奈:(メモ)ちょっと出かけてきます。カギはしめたあと、郵便受けから玄関の中に
  いれたからね!ごめんね~。

沙織:…もう!ほんとに自由な人ね…。カギまで勝手につかって!でもとにかく

  病院にいかなくっちゃ!



正志:沙織…来たか。
沙織:お父さん!おばあちゃんは!?


正志:…。
沙織:お父さん!!答えて!おばあちゃんは…。


正志:(だまって首を横に振る)
沙織:え、そんな…そんな…。


正志:おばあちゃん、がんばったよな。ずっと…。…こっちだ、おいで。
沙織:…おばあちゃん……。うそ、でしょ…?


正志:穏やかな顔をしている。まるで微笑んでいるみたいに。何かいい夢を見ながら
  眠っているようだよ。
沙織:やだ…やだやだ!私、おばあちゃんに結局なにも出来なかった!なにひとつ…!
  ねぇ、おばあちゃん、目をあけてよぉ!


正志:…沙織。
沙織:なんにも…なんにもしてあげられなかった!私…。なんにも…。


正志:そんなことは無いよ。看護師さんや先生から聞いた。おばあちゃん意識がしっかり
  している時は、いっつもお前のことを話していたんだってさ。
沙織:おばあちゃんが?


正志:最高にかわいくて最高に優しい、自慢の孫で自慢の娘だって。
沙織:お父さん…でも私、おばあちゃんの症状がひどくなってからはお見舞いにさえ
  行く事が出来なかった…。


正志:きっとそれでいいんだ。おばあちゃんも、お前の事がわからなくなった
  自分を、沙織に見せたくはなかったと思う。そういう人だ。
沙織:そうかもしれない…だけど!


正志:いいんだ。もういいんだよ。来ないでいいといった俺の責任でもある。…それより、
  色々準備をしないとな。おばあちゃんは、俺と沙織で送ってあげないと。
沙織:うん…。そうだね。


正志:俺はこのまま、病院の人と話をして葬儀の準備もする。沙織は一度家に戻った
  あと、実家の方にいってくれるか?色々と必要になるから、俺が連絡したら準備を
  していてほしい。喪服とかはまだ用意しなくていいから。
沙織:わかった…。…おばあちゃん、また、後でね…。


…沙織、帰宅…


沙織:おばあちゃん…。…佳奈さんの荷物、どうしよう?こんなことになっちゃって…。
  カギもあけたままには出来ないし…、あれ?テーブルに手紙が…。私宛て?
  なんだろう…


佳代子:大好きな沙織へ。
  これを読んでいるときは、あたしはもうこの世にいないんだね。沙織、あたしは
  あなたにとって、良いおばあちゃんでしたか?良い、お母さんでしたか?
  最後に会えてよかった。…何をいっているか、わからないかもしれないけど。
  あたし、佳奈って名乗って会いにきたんだよ。
  命のともしびが尽きる寸前、あたしはなぜか昔の身体に戻り、あなたの元に会いに
  行けました。おじいちゃんと、あなたのおかあさんのおかげかもしれません。
  意識を無くし倒れたとき、あの二人が笑って迎えてくれた。けれど、まだ
  沙織に出来ていないことがあるでしょう、て。そういって、あたしをこの身体

  で送り返してくれた。
  そうして、あたしは沙織と一日が過ごせた。
  沙織が大人になったら、一緒にお酒を飲みたかった。背中を流してあげたかった。

  沙織が大人になってからは、あたしがすっかり弱ってしまって、

  ずっと出来なかったけれど、やっと出来た。本当に嬉しい。
  あたしは人生の最後に、本当にすてきな時間を過ごす事が出来ました。ありがとう。
  
  沙織。立派に成長したあなたは、あたしの一番の誇り。祖母として、母として。
  あなたを育てられたこと。一緒に生きてこられたこと。幸せに思います。
  それと…7歳の誕生日のこと、覚えている?
  あの時プレゼントを間違えてしまって、本当にごめんね。
  入院した後、病院の皆に手伝ってもらって、やっと見つけたの。ようやく渡せるわ。
  16年、ずっとずっと待たせちゃった。誕生日おめでとう。
  佳代子より。



沙織:なに…、これ…?佳奈さんが、おばあちゃんだったなんて…そんなこと…。
  でも…。この字は…。あ、荷物!これ…中身…!
  これ、あの時の…くまのぬいぐるみ…そんな…。おばあちゃん…!私、私…。
  うわぁぁぁぁぁ…!


佳代子:(声のみ)沙織…泣かないで。あたしは、幸せ。笑っているよ。だから…

  どうか沙織も、ずっと笑顔でいてね。

沙織:おばあちゃん…。ありがとう……。



終わり
    





にほんブログ村

参加しています。よろしければクリックお願いします!