GCM郡山に行ってきました その6 ~展示を見る編~ | 正直、スマンカッタ!

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フリーランスライターSATOの仕事&プラペの記録。

 30分で終わるという触れ込みだった『測定ワークショップ』だったが、全ポイントを丁寧に巡ってくれたからか、結局、1時間強かかってしまう。終了後、早野教授の講演会場に行ってみるも、ちょうど「最後の質問」の段階だった。ぬー。残念。後日配信予定だというUSTに期待するしかない。椅子を見ると放射線○×クイズ用の札が置いてある。あー、これだけでも、やってみたかったなぁ(ウルトラクイズ的な意味で)。

 次の野尻美保子教授の講演はどうしようか。テーマは「放射線測定と私たち渡したとの健康」。非常に興味深いのだが、黒猫センセの場合、聞いたこともない呪文的な専門用語を連発するのがやっかいだ。昨日の福島会場の話では、別室のモニターでキクマコさん辺りが解説入れながら講演を見ていたという。今日も同じように茶々を入れてくれるだろうと淡い期待を寄せながら、配信会場たる2階の和室に向かう。ワークショップの受付の横、ガイガーカウンターの展示などが行われているスペースである。

 改めて和室に足を踏み入れると、ポスター展示の充実ぶりに驚かされる。α・β・γ線の違いに始まり、ガイガーカウンターの仕組みや飯館村などで活躍する各団体の取り組みなどが報告されていた。4部の講師の一人であるZABADAKの小峰公子さんの実家の線量を細かく測った図もあった。

 黒猫センセの講演が始まるまで、なんとなく図を見ていると、背後から「こちらを見ていきませんか?」と声をかけられる。振り向くと、畳の上に座って何やら怪しい機器を並べている集団がにこやかにほほ笑みかけてくる。震災後から自作ガイガー作りを始めたやまねこさんとその仲間たちだった。

 テーブルの上に並んでいるのは自作ガイガーカウンター。キットではなく、ガイガーミューラー管などを秋葉原で購入し、そこらにある材料を加えて作ったという。そのマニアックさは脱帽ものである。例えば、100円ショップで売っている歩数計で放射線の液晶を表示したという。CPM(カウントパーミニッツ)、つまり1分間に何回の放射線を動いたかを測るには、動いた数だけ歩数を示す歩数計がピッタリだったのである。入れ物が道具入れやカセットテープのケースだったりと、手作り感満載の外見も物凄い。

 話に圧倒されて写真を撮らなかったのが悔やまれるが、一応、ツイッター上にはこんな写真が上がっているので、ご紹介しておこう。
http://p.twipple.jp/KXzkq
これは初代だとおっしゃっていた。外側は100円ショップで販売している道具箱に入っている。

http://p.twipple.jp/MnxV3
こちらが2代目。カセットケースに入っている。

 ガイガーミューラー管は秋葉原で安くて2000円で買えるそうだ。同行したロフグレンさんは電気系の仕事をしているだけに、彼らの話にどっぷりハマったようだ。熱心に測定器を見ていたから、きっと自作ガイガーを作り出すだろう。お仲間、一人、増えました。手先が不器用な俺も、ちょっと興味がわいてきたところではある。

 それにしても、放射線オタクども。あえて、“ども”と呼ばせてもらおう。今まで彼らは持てる知識をうまく発信する機会がなかったのだろう。しかし、GCMでは興味を持って耳を傾ける人がたくさんやってきた。文字通り、水を得た魚のように話をし続けてくれた。

 放射線オタクの基準、感覚、リテラシー。そこには真実があるのではないだろうか。だって、好きな物事に対して、彼らはあまりにも真摯だ。嘘を付いたり、誇張することはない。これからの福島県、放射線オタクにスポットライトを浴びせることで、何か突破口が見つかるのではないだろうか。

 ふと思い出したが、昨年末、仕事でとある放射性医薬品製造者と会話したことがある。事故の影響の話をした際、彼は「数ベクレルとかってゴミだっつーの。俺はギガベクレル、テラベクレルを毎日こねくり回しています!」と福島出身の俺を勇気づけてくれた。本物の技術を知る者は、技術を捻じ曲げて伝えたりはしないのだと思う。

 自作ガイガーのブースを離れると、「郡山でお会いしましょう」と約束していた安積咲さん落ち合った。安積さんはツイッター上で、福島の思いを重みのある言葉で吐き出してくれている一人。(http://favotter.net/user/asakasaku&mode=bestここら辺を参照のこと)。純粋に話がしたかったし、しかも、ある件でちょっと意見が一致したので、ぜひお会いしたかった。

 あいさつを交わした後、よし、話をしようかと思った矢先、安積さんはおもむろにカバンから何かを取り出し始める。
「(今日のために)借りてきたんです」
 黄色いボディのそれは、郡山のTSUTAYAでレンタルしたシンチレーション式線量計「CK-3」だった。ガイガーカウンターミーティングだからか。真面目か! 写真はこれ。http://yfrog.com/khq7fzofj

 ちょうど入り口付近に国立天文台の大石さんがいらっしゃったので、そのままの流れでTSUTAYAの線量計の性能について聞いてみる。CK-3は大きく数字にブレが出ると報告されている。きくまこさんが昨年12月に郡山でレンタルした12番のマークがついているCK-3は0.6μSv/hほど高く出る傾向があるという(http://twilog.org/kikumaco/date-111220)。内部が汚染されているのではないかという話だ。レンタルの場合、ビニールにくるまずに、直に砂において測ったりする人もいるだろうから、どうしても数値が狂う危険性が伴うのだろう。

 安積さんの借りてきた“11番”も試しに校正済みの値に近い測定器と比べてみる。すると、校正済みが0.08μSv/hに対して、11番は1.0μSv/hだった。う~ん、どうしても高く出るなぁ。ちょうど説明書が入っていたので、大石さんにチェックしてもらうと、「誤差+-20%」という数字を発見してくれた。

「つまり、0.08と出たとしたら、だいたい0.1から0.06のどこかに当たりの値があるという意味なんです」と大石さん。
 なるほど。しかし、誤差2割プラスマイナスは大きい……。何度も測定を繰り返して自分の線量計の傾向を知り、機器のクセを理解するのが大切なのだろうな。クセを知るには、よく言われているように「MPの値との差」を参考にするのが手っ取り早い。それはワークショップでMPとの差を見て何となく理解できた。ただし、安定して測れる場所にあるMP推奨なので、開成山公園のサブグランドはやめておいた方がいいだろう。

 感心して大石さんの話を聞いていると、またもや安積さんがおもむろに鞄から何かを取り出す。ん? なんすか、その百式みたいな黄金色の物体は?

天然人工ビスマスのビスマスの人工結晶なんですが、測ってみたいんですよね」
 え? そういいながら、他にも宝石の原石(エメラルドだっけ?)を二つほど取り出してくる。そういえば、マニアとは言わずとも、安積さんが“石”についてのオフか何かに出たことがあるというツイートを見た覚えがある。安積さんが持ってきたビスマスはこれ。http://yfrog.com/oc1stxegj

「あなた何者なんですか!」
 大石さんは笑いながら問いかける
 いや、そりゃ、突然、ビスマス出されたら驚くって(笑)
 ちなみにビスマスは雨が降ったら空から落ちてくる放射性物質(※すべてのビスマスが放射性物質ではない)。雨でMPの数値が若干上がるのはビスマスがいたずらしているからだという。ならば、そこそこの放射線を出しているのでは?と思いきや、ビスマスに測定器を当ててみると、残念ながらほとんど数値は変わらずだった。原石も同様。こういうのは食品を測る機会のように、もっと精度が高いものじゃないとダメではないかなぁ。

 安積さんは残念がっていたけど、こーゆー風に面白がって何でも試してみること自体が大切なのだと思う。どうしても専門性が高くなる放射線の世界だけに、正座して偉い先生の話に耳を傾けるのでは、なかなか理解も進まない。楽しみながら、遊びながらの中で本当の知識は身についていくのだろう。

 しかし、よいものを見させてもらいました。オタクたちに乾杯! あ、黒猫センセの講演を見るの忘れてた……