Vol.161-1/2に続けてご覧ください。
仏生山公園
高松クレーター 1999年3月29日の四国新聞の記事を抜粋。
いん石の衝突跡か、カルデラ跡か。いまだ決着がついていない「高松クレーター」の成因について、山口大学理学部の三浦保範助教授(惑星物質科学)が、先ごろ米国で開かれた学会で、「いん石の衝突を決定づける粒子を発見、年代も特定した」という新事実を発表した。さらに、同じ破砕岩の中から、二十一億年も昔の原生代の鉱物も見つけたという。「高松クレーターはいん石の衝突孔であるばかりか、列島が大陸だった時代のメッセージを秘めた”タイムカプセル”だ」というのが三浦助教授の推論だ。
専門家筋には冷ややかな見方もあるが、この問題の火付け役の追跡班としては、耳を傾けねばなるまい。
地球外物質
高松クレーターは、高松市仏生山町の仏生山公園付近を中心点とする直径四キロ、深さ二キロほどのおわん型のくぼみ。問題の球粒は、クレーターの南縁に近い実相寺山のふもとで採取した破砕岩から見つかった。硫黄がないニッケルの粒子があれば、それは地球外物質ということなんです」と三浦助教授。
もちろん、世界で確認済みのいん石衝突跡の球粒と比べても、類似性に問題はなかった。「つまり、この球粒は、いん石が衝突して飛び散る過程でできたものなんです」。三浦助教授の結論は明快だ。
衝突は噴火前
新発見にさらにインパクトを加えたのが、球粒の年代の特定。ウランやトリウムなど放射性同位元素の改変の度合いから年代を測定する権威、オーストラリア国立大学に分析を依頼。約千五百三十万年前のものであることを突き止めた。
むろん、反論、疑問はある。
同じ目的意識をもって高松クレーターを調査した学者らからは、「一帯で同様の調査をしたのに、なぜ三浦さんだけが」の声も。「それは頻度の差。簡単ではない。六年間、何度も現地に通った末にやっとですから。鉄ニッケルを含む球粒から年代測定できるジルコンを見つけたのは、世界でも初めて。ノウハウもあるんです」と三浦助教授。
判断早いのでは---高松クレーターを発見した河野芳輝金沢大理学部教授
私は岩石の専門家ではないが、ニッケルに硫黄がないのと粒球の大きさだけでいん石の衝突と判断するのは早いのではないか。心情的にはそうあってほしいが、科学的作業は別。複数の研究者による証明が必要だろう。高松で二十一億年前の鉱物が見つかったというのは、日本の地質学の常識を覆す話。讃岐平野の深部に何があるかはよく分かっておらず、全くあり得ないこととは言えないが、にわかには信じられない。
細かな検討必要---高松クレーターの成因を調べた佐藤博明神戸大理学部教授
私たちも周辺の岩石を詳しく分析したが、鉄ニッケルを含む球粒は発見できなかった。これだけ球粒が大きく、ニッケルに硫黄がないとすれば、いん石衝突の可能性が高い。
だが、ガラスの組成からは、いん石の衝突を示す証拠は出ておらず、細かなデータの開示と検討の必要がある。二十億年ほど前のジルコンはほかでも見つかっている。日本で最も古い鉱物の一つとは言えるが、岐阜県で見つかった石は礫(れき)自体が古かった。今回の発見は石の中のほんの一部にすぎず、その他の部分はずっと新しい。ジルコンの存在と高松クレーターとは直接の関係はないと思う。
事の発端は
十年以上前の平成元年。観音寺市と高知市を結ぶ線から東側の四国をほぼ二キロ置きほどの間隔で重力異常の調査をしていた金沢大の河野芳輝教授らのチームが、「読み違え」とも思える負の重力異常地点を発見した。高松市と香川町の境。チームは六年をかけ、密度を濃くした重力異常調査のほか、磁場の強弱で地下構造を推定する地磁気異常調査、跳ね返る音の角度や時間で内部の様子を探る人工地震波反射法調査などを重ね、高松市の仏生山公園近くを中心点とした直径約四キロ、深さ約二キロの半球のくぼみが地下に眠っていることを突き止めた。
論争を呼んだのはその成因
金沢大チームは(1)いん石の衝突跡(2)カルデラ跡(3)断層のくびれ―の可能性を指摘し、六年間の調査結果から、いん石の衝突跡の可能性が最も濃いと推論した。
これに対し「火山性の陥没構造を示すコールドロンだ」とする地質学の立場からの反論が相次ぎ、論争は白熱した。途中、金沢大が「クレーター内部は、早明浦ダム七個分ほどの巨大な地下湖になっている」という説を明らかにしたことから、成因論争は水源論争に姿を変えて市民的関心を呼んだ。
いったんは行政も動く
七年暮れから高松市が電磁探査などの手法で調査を実施したが、八年二月「水はあるが、利用は不可能」との結論を発表、市民の関心も遠のいた。
が、ここにきて高松市の結論に不満を示していた金沢大が、独自の水資源再調査を今秋に計画しているほか、三浦助教授も同時期、国際的な現地視察を予定するなど、第二次ともいえる盛り上がりを見せ始めている。いずれの論争も「決着の決め手はボーリング」というのが関係者の一致した見方だが、費用対効果の問題がネックになり、実現していない。
▼仏生山公園の案内図、高松クレーターの説明板
<Akijii展>和を楽しむ切り絵-№02.「金閣寺」です。
<切り上がった切り絵><着色した完成作品>
--今報了--





