●親殺しのパラドクス
キップ・ソーンのタイムマシンが完成した世界
では、50年前の世界と自由に行き来できるように
なりました。
しかしタイムトラベルが実現すると大きな問題
が持ち上がります。
それはタイムパラドクスです。
タイムマシンで過去の世界に行ったトムという
男が、殺人事件を起こしてしまいました。
彼が殺したのは、なんと自分の父親でした。
トムが過去の世界で父親をころしてしまったら、
彼が「結婚してトムが生まれる」という
未来がなくなってしまいます。
すると、トムが最初から存在しなかったのなら
タイムトラベルで過去に行ったトムも存在
しなくなります。
父親は殺されないので、もとの歴史どおり
結婚しトムという息子が生まれます。
ということは、やはりトムは存在して
父親を殺しに行き・・・と延々と繰り返しに
なってしまいます。
このように時間を行き来することによって、
過去と未来の間で発生する矛盾、
つじつまがあわなくなることをタイムパラドクス
と言います。
多世界解釈で解決?
このようなタイムパラドクスを解決するアイデアに
量子論の多世界解釈があります
一瞬のうちに別世界に分離してしまう
という発想で考えてみます。
①タイムマシンで過去に行ったトムは、
自分の父親を殺害してしまいます。
②多世界解釈によってトムが父親を殺害した
瞬間、父親を殺害したトムが存在する世界と
父親が亡くなってトムが消滅した世界とに
分離します。
③二つの世界は、決して変わることなく
それぞれ、存続していきます。
トムが存在する世界では、トムは殺人犯として
裁かれ、一方トムが存在しない世界では、
トムの痕跡がまったくない世界になります。
そして、父親だけが生き残ります。
これなら、タイムパラドクスの問題も
解決することができます。
多世界解釈ではタイムマシンで過去に行っても
未来を変えられるわけではなく、
元の世界から分離した全く新しい未来が訪れる
ことになるようです。