ハァ … 院長様、今日はバイト初日で帰りが遅くなってしまいました …
ルームメイトの『サ・ユリ』さんって確か、学部や学科も同じはず … 今日のオリエンテーションで『はじめまして』って挨拶したかったのに …
あの人 … えっと … 名前、何だっけ … チェンさん … チョンさん …
と、とにかく今日の予定が全て狂ってしまいましたから …
結局、あの人ったら … ずっと『コピ』が閉店するまでいるし …
自意識過剰だって思われると嫌だから黙っていたけど、何か見られてるみたいで仕事をやりにくいったら …
それに …
あの人も私も帰る場所が、隣り合わせの同じ学生寮なんて … 神様は本当にイタズラ好きですね …
ワンさんが女子寮まで送ってくれたから良かったけど、そうして貰わなければあの人と二人っきりになってしまいそうでした。
たったの5分でも、逢ったばかりであんな事を平気でする人と … 二人だけでなんて居られません。
院長様、大学構内に小さなチャペルもあるし、毎日のお祈りは欠かしませんので、どうか私をお守り下さい …
さあ、いよいよ私がこれから4年間住むことになる部屋に着きました。
サ・ユリさんが、寝てしまってなければいいんですけど …
コン、コン、コン …
「は~い、どうぞ!」
サ・ユリさんて … 元気そうな人 …
キキィ … バタン …
「あ、あの … 遅くなりました。はじめまして、コ・ミニョです」
「キャ~、可愛い~、私はサ・ユリよ、ユリって呼んで。私もミニョって呼ぶからぁ~」
な、何か … 院長様、サ・ユリさんは、背が高くて美人だけど迫力があります。
「あ、はい … サ・ユリさん、宜しくお願いします … 」
「もう、ユリでいいってば!ミニョは何かサークル決めたの?」
「サ、サークル … ですか?」
クラブ活動の事かな … 中学、高校と教会の子供達の世話が忙しくて、何にもしてなかったけど …
『教会の外の広い世界を見て来なさい』って、院長様が私を送り出してくれたから …
やっぱり、せっかくだから私に出来る事をしてみたいけど … 具体的には何にも考えてなかったな …
今日のオリエンテーションでは、サークル紹介もあったはずなのに、あの人が余計な事をしてくれたおかげで、それも見れなかったし …
「私はね、昨年のファン大学の文化祭で『team K』ってバンドのファンになっちゃったから、この大学に入ったの。だから、そのバンドの人がいる軽音部に入部するんだ!ミニョは?」
ええっ … ここの学生バンドが好きで、わざわざファン大学に入学って … サ・ユリさんって積極的なんですね …
「私はまだ決めてないです。今日のオリエンテーションも遅刻して出れなかったから … 」
「ええっ~、アハハ … 入学初日から遅刻ですってぇ~?ミニョは真面目そうな顔してんのに、やるわねぇ!」
「途中で、おばあさんに道を聞かれて案内してたら、元の道に戻れなくなってしまって … 」
あ、あの人の事は事故なので忘れます。サ・ユリさんにも、絶対に言えません …
「プッ、ミニョらしいわね。大丈夫よ、明日の新入生歓迎会でも、サークル紹介があるから。ファン大学はいっぱいサークルがあって、1日じゃ紹介しきれないし … 」
「そ、そうなんですね … 」
「そう、明日は私のカート様ひきいる『team K』のライブが聴けるのよぉ~、今晩は興奮して眠れないわ」
「ライブ … ですか」
「あ、ミニョはオリエンテーションに出てないから知らないのか。明日は入学式をやった講堂で、カート様のバンドが生演奏するのよ!」
「わぁ、それは楽しみですね」
「何言ってんの、ミニョ。1年生は強制じゃないけど、ほとんど行くはずよ。サークル紹介や購買部の出張販売もあるから … 」
あ、体操着とか体育館シューズとかを買うのかな …
「はい、もちろん私も行きます。生演奏、楽しみですね。えっと … team … 」
「team Kよ、カート様のK!カッコいいんだからぁ~、絶対にミニョも好きになっちゃうよ!」
そ、それはないと思いますが … 歌を生で聴くのは好きです。教会の聖歌隊の皆さん、元気かな …
「はい、明日は一緒に行きましょうね、ユリさん」
院長様 … 少しワクワクしてきました … どんな『歌』なんでしょう。とても楽しみです。
今日、あったイヤな事は … 一晩、眠って頭の中に残さないようにします … おやすみなさい …


