虹の七色（あるいは六色）の話の続きです。
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虹を追いかけて ／ 岡村孝子 Okamura Takako (youtube.com)
世の中に存在する「色」というのは、複雑に混合された光の波が目に届いたときにヒトの脳に生じる「色覚」であって、そのひとつひとつに別々の名前をつけていたら、名前がいくつあっても足りないというシロモノのようです（わたしが考え方だけは知っている「フーリエ解析」にのっとって考えると「複雑に混合された光の波」は種類としては「無数にある」ことになります）。例外的に、一次元の尺度をあてはめて「数値にしていくつ」という対応関係をつけられるのが、スペクトル分解で得られる単色光ですが、その波長は約４００ナノメートルから７００ナノメートルだそうです。それより外側は紫外線および赤外線として、ヒトの目に入っても色覚を生じない光になります。
この「可視光線」の範囲に入る光であっても、複数の波長の光が重なり合って目に届いたときにどういう色覚を生じさせるかについては、かなり複雑な理屈があります。それらの理屈の中でいちばん基本になるのは、二次元平面の中に「どの組み合わせだとどの色覚が生じる」というありさまを描いた「ｘｙ色度図」というものですが、これだって、本気で理解しようとし始めると、つぎつぎに疑問が生じて、その道の素人にはなかなかわからない話です。いちおうリンクを張っておきますが、
そこに描かれている「三角のような、舌のような図形」の、「ｘの値が最大になる角（かど）」に対応するのが、可視光線の中でいちばん波長の長い単波長の波が目に届いたときの色覚であり、つまり「赤」です。そして「ｙの値が最小になる角（かど）」に対応するのが、可視光線の中でいちばん波長の短い単波長の波が目に届いたときの色覚であり「青から少しだけ紫に寄った色」です。それらの二つの角（かど）を結んで、左上へ大きくふくらんだ「舌のかたちの曲線（スペクトル軌跡）」の上に存在するもろもろの点が、単波長の可視光線が波長ごとに生み出す色覚に対応しており、それらがすなわち、プリズムで分光されたときのスペクトル上に観察される色だそうです。
そして、二つの角（かど）を「まっすぐに結んだ直線（純紫軌跡）」の上のもろもろの点に対応するのは、単波長の光によってはけっして生じない「青紫と赤との中間の色覚」を生じさせる「ｘとｙの組み合わせ」だそうで、「色相環」
を構成する色のうち「虹の七色」からは除外される色は、この直線上の点に対応しているのだそうです。
そうすると、世に「紫」と言われている色のうちの大部分は、この直線上に対応する色覚であるから、虹の七色の中にはない、ということがわかります。虹の七色の中の「赤」の対極は、紫のうちでもかなり青に近い「violet」（スミレ色）であって、そこから少し赤寄りの「purple」は、紫は紫であっても「虹の七色を構成する紫」ではない、ということになります。
ところでわたしは、レディースの衣類を通販で購入するようになって以来、ファッション用語での色の種類には敏感になっていますが、ひとつふしぎでならないのは、同じかたちの衣料が色違いで何種類か用意されている場合、「パープル」と名のついたものはオプションとして含まれているのに、「バイオレット」は品揃えがないという場合がきわめて多いことです。しかも「パープル」と名がつくものも、実際にはつぎにリンクするサイトにある「パープル」ではなく、
もっと赤みがかった、「マゼンタ」や「ボルドー」に近いような色合いのものが多いのです。
「同じデザインで『バイオレット』のがあれば買うのに、この色じゃあ、赤みが強すぎて、わたしには合わない」と、残念に思えることが多いです。アパレル産業は「赤みがあればフェミニンだ」という固定観念に支配されすぎてるんじゃないか、と思えてなりません。虹の環のいちばん内側の色に対応するきわめて青に近い紫こそが似合う人、それが好きだという人は、わたし以外にもたくさんいると思うのに。