料亭や旅館、呉服などでは、古くから「接客」が重視されていました。
“お客様”との関係を大切にする風潮が、それらの業種に見られます。
なぜだろうと考えてみて、ひとつの共通点に気付きました。
「女将(おかみ)」がいるのです。
昔から接客が重視されていた業種では、きっと女将の存在が大きく影響していたに違いありません。
しかし実のところ「接客」が一般の小売業やサービス業で深く認識されるようになったのは、まだほんのこの10数年ほどだと考えられます。
思い出してみて下さい。
外食でお店に入ったとき、昔の私たちは自分で空いている席を探したものでした。
それが何時からか、お店の係員に席を案内されるようになります。
当初は、その雰囲気に誰もが少しとまどい、自分が丁寧に扱われていることをどことなく嬉しく感じたものです。
丁寧に扱われることによって、顧客もまたそのお店を丁寧に捉えるようになります。
ところが、ほとんどのお店で案内されるようになって状況は変わります。
そうしてもらう(案内してもらう)ことに慣れてしまうとそれが普通で、そうではないと異常に思えてしまうから不思議です。
ちょっと待たされただけで案内が遅いと不愉快に思う顧客が出てきます。
そしてどんどん、お店における顧客の地位は上がってきます。
少し難しい表現かも知れませんが「お客様志向」「お客様第一主義」「お客様至上主義」といった言葉に象徴されます。
「お客様は神様です!、お客様が来店してくれるからこそ・・・」
物が売れない時代に入り、ますます顧客の地位は上がるばかりです。
そういう「接客」が実は大きな誤りであると私は考えていますが、それはまた別の機会に語らせて下さい。
ともあれ-
お客様に対してはにこやかな笑顔で対応、丁寧な言葉遣い、敬意をもって接する、そんな面が強調され「接客」の本旨のように考えられがちです。
確かにそれらは必要なことですが、「接客」の半分でしかありません。
あえてそれを“サービス(service)”というなら、残りの半分は“クレンリネス(cleanliness)”と呼べるものになるでしょう。
クレンリネスとは、分かりやすく言うと「清潔なお店を心がけて“おもてなし”の心を提供する」ことです。
笑顔が苦手で、気の利いた挨拶ができないマスターのカフェがあります。
しかしそのお店で出されるトレーや食器はいつ訪れてもとても綺麗です。
手にしたスプーンやフォークにはひとつの曇りもありません。
何気にテーブルの上に置かれている調味料入れやメニュー立ても行き届いています。
とても細やかに店内の清掃を心がけているのが一目瞭然なのです。
(言わずもがな、お店のトイレ清掃もすこぶる徹底されていました)
おもてなし-
滝川クリステルさんが2020年オリンピック開催地を決めるIOC(国際オリンピック委員会)総会でのプレゼンテーションで示した言葉です。





