八潮市の道路陥没事故は、発生から10日以上経つのに、まだ運転手を発見することができないとは、、、

こんなこと言っても詮無いことですが、最初の引き上げで失敗したのが本当に悔やまれますね。。。


この事故の発生原因について、この下水管の位置は「硫化水素が発生しやすい」要素が重なっていた可能性があることが分かってきました。

 

硫化水素が発生しやすい要因

 

この記事では、硫化水素が発生しやすい要因として、

1.上流の下水管の直径よりも下流の下水管の直径の方が小さいこと

2.下水の最下流に位置していること

3.下水の乱れが生じやすい構造であったこと

の3つを挙げています。

 

ただ、この記事でも指摘していますが、こんな場所、東京にもザラにあるんですよ。

下図は、場所は伏せますが、東京東部を流れる下水道の最下流付近を表示した「下水道台帳」のキャプチャ画像です。

※町名等は消していますが、実在する場所です。

 

 

北と西から幹線が来て、南の方に流れる大幹線に合流しています。

水色の点線部分を拡大した図を見てみます。

 

細かくて見づらいと思いますが、幹線の太さは赤い下線で表示しています。

枝線の太さは青い下線で表示しています

 

この交差点は、3方から下水が合流していますので、下水の流れが乱れそうですね。

しかも、黄色い丸で囲んだ下水管を見ていただきたいのですが、左右から[167㎝×145㎝]と[153㎝×146㎝]の下水管が合流したものを[40㎝]の直径の下水管で大幹線と合流するマンホールまで流しています。

 

これは、上記の「硫化水素が発生しやすい要因1」に合致しますね。

この黄色の丸で囲んだ下水管は勾配が6%と左右の下水管と比較すると急になっています。

太い管から合流した下水を急な角度で細い管で流すとなると、「硫化水素が発生しやすい要因3」にも合致するようです。

また黄色の丸で囲んだ下水管の標高は[-5m]ほどなのに対し、合流先の大幹線は[-12.5m]なので、大きな落差があります。

 

この大幹線の先は、下水処理場なので、下水の最下流ということで「硫化水素が発生しやすい要因2」にも合致します。

 

不動産評価のチェック項目

今回の事故が起きるまで、下水道台帳というのは主に「浸水深が地形では理解できない数値になっているとき」に見ていました。

 

台地上で水が溜まるようには見えないのに、浸水可能性が[0.6m]とか指摘されているような場合です。

下水管が合流するような場所であった場合に、大雨が降った場合には下水があふれ出す内水氾濫の可能性が高いことの判断材料にしていました。

 

他にも、対象不動産に下水管が既に引かれているかどうかを確認するために見たりもしますが、今回は、この下水管の幹線が合流するような場所は、『土地が陥没するリスクが他の場所よりも高い』ということが分かりました。

 

これは、物件の安全性をチェックするための1項目に追加しなくてはなりません。

 

まぁ、そもそも軟弱地盤の場所は勧めていないので、というより“購入しない”ように強く勧めているので、プラスで「その立地はやめましょう!」という材料が増えたという感じでしょうか。

 

下水管の腐食自体は軟弱地盤でない場所でも起きますが、今回のような大きな陥没にはなりません。

固い地層なら、あのアリ地獄のような穴の拡大はあり得ないので。

また、台地の上(高台)に下水道の幹線は少ないです。下水道というのは、自然傾斜で流すので、高台に幹線は少ないのです。

なので、内水氾濫も発生しにくいといえます。

この意味でも、高台を選ぶ理由がありますね。

昨日(1月28日)発生した八潮市の道路陥没事故ですが、運転手の救出にこんなにも手間取るとは思ってもみませんでした。

周囲にも地下の空洞が広がっているようなので、この場所が軟弱地盤であることが救助さえも困難にしてしまっているのかと思わずにいられません。

一刻も早い救助を願っています。

 

TVなどの映像を見ると、トラックが落ちた穴にはコンクリートの壁のようなものが見え、そして、その壁の亀裂から水が流れ出ている様子が把握できました。

 

道路の下に空洞ができた理由

道路の下に空洞ができた理由については、

「下水道管が腐食して穴があき、徐々にその穴に土砂が流れ込むことで地中に空洞ができていた可能性がある」(県の下水道事業課)

 

[出典]

 

そして、下水道管が腐食した理由については、

「下水道管を流れる下水に含まれる生ゴミなどの有機物から硫化水素が発生し、空気に触れることで硫酸となって水道管を溶かした可能性がある」

とのこと。

 

しかし、県が陥没箇所の下水道管を2021年に検査した際には「直ちに工事が必要な状況にないBランク」という判定だったらしいのです。

 

[出典]

 

下水道管が破損した別の要因は「軟弱地盤」?

確かに、下水道管の老朽化は全国的な課題となっています。

上述したような硫化水素の問題もあるのでしょう。

ですが、硫化水素が発生するのは、この場所に限った話ではないですよね。

それに上述の通り、点検した際には「Bランク」だったとのことですし。

 

軟弱地盤も、この交差点だけでなく周辺にも軟弱地盤が広がっている訳ですが、地盤の良い台地などと比較すると、下水道管の破損はやはり軟弱地盤で起きやすいと考えています。

 

熊本地震の際に下水道管の被災状況を調査した資料があります。

 

平成28年熊本地震における下水道管路施設被災の特徴と対策

https://www.nilim.go.jp/lab/ebg/pdf/kumamoto_report_0609.pdf

 

被害の特徴の一つに「後背湿地に被災管路が集中」していたことが挙げられています。(P.16以降)

 

震度7が連続して発生した熊本地震を、八潮市の事故の参考にするには不適当かもしれませんが、地盤が悪いところでは、地中構造物も破損する可能性が高くなるという点は参考にすべきだと考えます。

 

軟弱地盤では、地中も揺れる

シンプルに考えれば、管の周りが柔らかい地層の場所と固い地層の場所を比較すれば、柔らかい地層の方が管に対するホールド感は緩いですよね。

ということは、関東でも何度かあった地震や日々の通行車両による振動などによるダメージも、管の周りが柔らかい地層の場所の方が大きくなるのが普通ですよね。

 

下水道管の亀裂を招いた原因の一つは、周囲が軟弱地盤だからであり、過去の地震や日々の振動でダメージを蓄積した結果だと考えています。

 

軟弱地盤で揺れるのは、基礎杭も同じ

これ、下水道管に限った話ではないですからね。

軟弱地盤の上に、長~い基礎杭を支持層まで伸ばして建っている、人間が住んでいるマンションなんかも同じリスクがあるということです。

 

ピロティ(1階は柱だけの駐車場にして、2階以上を居室にする形式)の建物は地震に弱い!

 

という話をよく聞くと思いますが、

 

軟弱地盤に数十メートルもの基礎杭をまっすぐ立てて、その上を居室にしている建物も同じようなもの

 

ではないかと思うのです。

 

実際に起きた大地震後の被害調査結果でも、軟弱地盤エリアにある建物について「液状化した地盤においては杭頭付近のみならず地中部における杭の損傷も確認されている」のです。

地震が発生すると、軟弱地盤エリアでは液状化による“側方流動”が発生する可能性があります。

これは「液状化に伴い地盤が大きく側方に動く現象」で、地中構造物にも大きな被害を与えることが分かっています。

 

「軟弱地盤エリア」に建つ大規模マンションに、倒壊リスクはないのか?

デベロッパーは、法律的に問題のない範囲での建物の強度を満たすだけで「安心だ」といって、軟弱地盤エリアでも平気でマンションを販売しています。

「軟弱地盤エリア」に建つ大規模マンションに、本当に倒壊リスクはないのでしょうか?

液状化による側方流動にも耐えられるのでしょうか?

 

“想定外”については、デベロッパーは責任を取りません。

「我々は建築基準法で定められた強度は保つ建物を販売しています。この地震の揺れや液状化による基礎杭の損傷は“想定外”のことなので責任は取れません。」

ということです。

 

確かに、「現在の法律で決まっている強度」を満たせば、後で責任を追及されることはないでしょう。

ですが、何度も触れているように

震度7で倒壊する可能性があるとされる「耐震等級1の建物」をいまだに震度7になる可能性が高い軟弱地盤エリアで供給し続けている

というのは責任問題にならないだろうかと疑問を持っています。

 

震度7になる可能性があるというエリアが分かってて、そこに耐震等級1の建物を供給している。

これで倒壊しても、「想定外」ですか?

 

 

デベロッパーに法的な責任がない以上、後は消費者の自己責任となります。

「軟弱地盤エリア」の物件には手を出さないようにしましょう。

 

 

 

埼玉県八潮市にある県道54号線の中央一丁目交差点で道路の陥没事故が起きました。

 

詳細は分かりませんが、陥没した穴の側面はきれいな壁になっているように見え、地下に人口の工作物があったのではないかとも推測されます。

 

さて、推測だけでは意味のない情報なので、公開情報から事故現場の地盤を見てみましょう。

 

中川低地の地盤は悪い

八潮市は「中川低地」のど真ん中にあります。

「中川低地」とは、文字通り中川の流域に広がる低地帯です。

中川は、江戸時代初期まで利根川や荒川の本流だったので、流域には分厚い沖積層が形成されています。

 

さて、今回の事故の場所です。

国土地理院地図の「土地条件図」で見ると、赤い斜め点線で示された「低地」であることが分かります。

 

因みに、標高は2.8mほどのようです。

東京湾から20kmほど離れているのに、標高が3mもないんです。ちょっと驚きですよね。

昔々、この辺りは海(奥東京湾)だったと知れば納得ですが。

©江戸東京博物館

 

この場所をJ-SHIS Mapの表層地盤で見てみると、

と、見事に一番揺れやすい地盤を示す濃いピンク色のエリアに位置しています。

地盤増幅率は「2.47」と、全国的にみても最悪レベルの数値です。

大地震が発生し、震源がそれなりに近かったら、震度7となる可能性が高い場所です。

 

今回の道路陥没事故の原因は不明ですが、地盤の悪い場所では陥没事故が起きやすいのも確かです。

 

過去の陥没事故

以前の記事でも取り上げた外環道のトンネル工事で陥没した「つつじヶ丘」や「横浜」も地盤の悪い場所でした。

 

 

2016年11月に陥没した福岡県の「博多駅前2丁目交差点」も、地形が「氾濫平野」や「自然堤防」です。

 

 

まぁ、杜撰な工事が行わたことが原因であることが多いのですが、地盤が悪いと、工事の難度が上がり、陥没事故を招くという面もあるように思えます。

 

このように、大きな地震がなくても陥没したりするような地盤の悪い場所には住まない方がいいです。

 

上の方に、縄文時代の東京湾の地図を掲示しましたが、縄文時代でも陸地だった場所を選びましょう。