昨日のクローズアップ現代で「地震で傾く"基礎のリスク"」が放映されました。

 

※NHK ONEで12月22日まで配信されているようです。

 

基礎杭(支持杭)は、過去の大地震でも破損していた

[1964年新潟地震] 杭が破損し、建物が傾斜した。
[1978年宮城県沖地震] 抗頭の被害により建物が沈下・傾斜した。
[1995年阪神淡路大震災] 液状化による地盤変位、側方流動による杭の被害が多く見られた。
[2003年十勝沖地震] 地盤変位の影響と考えられる杭頭部の圧壊により建物が傾斜した。
[2011年東日本大震災] 杭頭の破損や地中部の折曲りが発生した。

 

番組の中で、東京科学大学の田村教授が「杭が壊れても建物が転倒することはないと思っていました。その常識が間違っていたということが今回はっきりしました」と言っています。

今まで、杭が破損するケースはあれど、杭の破損を直接の原因とする建物が倒壊したケースはなかったため、杭が破損しても建物は倒壊しないと思ってきた、と。

申し訳ないですが、ちょっと呑気ですよね。

 

建物を支えている杭が破損するということは、建物が浮いていられる訳もないので、その破損した分沈みます。

また、何本もの杭を打っていますが、折れる場所はマチマチで、折れるタイミングも同時である筈がないですよね。

なので、建物が傾くのは、普通に想定内で、これだけ沢山の建物が建っていれば、その中の数棟は倒壊しても不思議ではないですよね。

 

基礎杭の安全性を過信しすぎないで欲しいというのは、他の記事でも書いてきたつもりです。

 

軟弱地盤エリアの戸建は、30%以上の確率で傾く

この番組で、新たな知見となったのは、軟弱地盤エリアにある戸建住宅の場合、新・新耐震の基準であっても、30%以上の確率で傾くという結果です。

 

※番組内で表示された画像。

 

これは、能登半島地震で被害を受けた建物の割合を元に算出したもので、他の地震では異なる比率になる可能性はあるのですが、2001年以降に建築された新・新耐震の建物でも、住み続けられないほど傾くリスクがこんなに高いとは驚きました。

 

やはり、そもそも軟弱地盤エリアに家を建てること自体が間違いなのです。

先祖代々から続く生業などが理由で、その場所に住まざるを得ない人もいると思いますが、そうでない方は、利便性とかどうでもいいので、地盤の良いエリアに移っていただきたいと思います。

 

軟弱地盤エリアは震度7の揺れが襲う

これまた繰り返し書いていることですが、軟弱地盤エリアは大地震の際に震度7となる可能性があります。

クローズアップ現代の番組内でも出ていましたが、マンションの基礎も、最新基準でさえ震度5強程度を想定しています。

 

震度7の大きな揺れで基礎杭が破損する可能性はそれなりにあるでしょう。

震度7の揺れが襲えば、基礎杭の破損は運よく免れたとしても、建物自体が損壊する可能性があります。

建物の倒壊を免れたとしても、部屋の中も、震度7の揺れが襲います。とてもではないですが、人が立っていられるレベルの揺れではありません。

家具も、突っ張り棒程度の固定では、倒れてきて、なおかつ大きく動き回り、人を襲う凶器となる可能性があります。

 

逆にいえば、揺れが震度5強より大きくならなければ、杭が破損する可能性も低くできます。

建物自体の損壊も大きく抑えられます。

 

揺れが震度5強以内に抑えられる可能性が高いのは「地盤が良い」エリアです。

 

下の図は、名古屋大学減災連携研究センター特任教授の武村雅之先生が2003年に作成した地図です。

「1923年関東地震による東京都中心部 (旧15区内) の 詳細震度分布と表層地盤構造」

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaee2001/3/1/3_1_1/_pdf/-char/ja

に掲載されている地図をキャプチャしたものです。

 

この図を見ても、距離が近くても震度が結構違うのが分かります。

勿論、この震度は推定であり、実際に計測したものではありませんが、参考になると思います。

 

震度が高くなりにくい場所を選べば、建物は無事に済む確率が高くなり、部屋の中にいる家族もケガをするリスクを減らせると考えてください。

 

昨夜、リビングで一人、サッカーを観ていたら、長周期地震動のようなゆったりとした揺れを感じ、NHKをつけると、「津波注意報」が出ていました。

揺れがゆっくりに感じたので「震源は遠い」ということ、それなりに揺れたので「結構大きな地震」であることは予想していたものの、予想以上に大きな地震で驚きました。

その後、「津波警報」に変更され、実際に70㎝の津波が観測され、という経過はご存じのことと思います。

 

震度分布

[震源図]

震源の場所を示した地図です。

気象庁の地震情報のページをキャプチャした画像です。

※詳しくは、気象庁の「地震の活動状況」をご覧ください。

 

この中の一番大きな円をクリックすると、

と表示されます。

 

[震源分布図(青森県付近)]

 

震源が青森県の東方沖だったので、青森県の東側や岩手県沿岸の震度が大きいのは分かるのですが、十和田湖付近で震度3となっているのに、東京23区でも震度3になる場所があるという、広いエリアに影響を及ぼした地震でした。

 

[震源分布図(東京都23区)付近]

 

まぁ、東京で震度が高い場所は、軟弱地盤エリアであろうということは理解できるのですが、震度3のエリアがすごく広いですよね。

これ、言い方を変えれば、今後、日本海溝・千島海溝沿いの領域で規模の大きな地震が予想されていますが、それって他人事ではなく、東京にも影響が出る可能性がありますよ、ということです。

特に軟弱地盤エリアは注意が必要です。

 

北海道・三陸沖後発地震注意情報

昨年8月に「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発表されましたが、それの「北海道・三陸沖」版です。

 

 

詳しくは、上記の気象庁のページをご覧いただきたいですが、またしても「巨大地震」が発生する可能性が高まっている状態だということです。

これが実際に発生する可能性は高くはないものの、平時と比較すると、やはりかなり高い状態だといえると思います。

 

上述したように、北海道・三陸沖で大地震が発生することは、都民にとっても対岸の火事ではありません。

更に言うなら、この地震もそうですが、現在、日本列島周辺は地震の活動期に入っています。

首都直下地震や東南海地震もいつ起きても不思議ではないと考えていただきたいです。

 

毎度毎度の繰り返しですが、一番の防災は、「安全な場所に住むこと」です。

青森県から遠く離れているにも関わらず、震度3を記録するような「軟弱地盤エリア」に家を買うことはやめていただきたいです。

香港・大埔区公営高層住宅群の火災は衝撃的でした。

ここまで高層建物全体が火に包まれる様子は初めて見ました。

 

2017年にロンドン西部の高層公営住宅で発生した火災でも建物全体が炎に包まれている様子に戦慄しましたが、今回はそれが複数の棟に燃え広がっているのが衝撃でした。

 

犠牲者の数も、ロンドンのグレンフェル・タワー火災が72人なのに対し、今回の香港の方は159人ですか。

まさに「大惨事」になってしまいました。

 

日本ではあり得ない

ロンドンのタワマン火災もですが、香港の今回のタワマン火災も、建物の外側から延焼しています。

ロンドンの場合は、建物の外装を改装した際に使われた被覆材が、急速に炎が広がった原因とされ、

香港の場合は、竹の足場や、発泡スチロールのシートが居室の窓の外側に貼られていたことなどが原因と推測されています。

 

日本では、そもそも火災で多くの犠牲者を出してきたことを教訓とし、建物には非常に厳しい耐火基準が設けられています。

外壁に可燃性のパネルを使用することもあり得ないですし、修繕工事の際も、可燃性の足場やシートは使用できません。

 

日本のタワーマンションで大きな延焼の可能性が低い理由は、
壁や床に耐火性能を備えた“耐火構造
高さ31m以上(11階相当)の建物にはスプリンクラーの設置が義務化
防火扉や排煙設備
連結送水管(送水口・配管・放水口・格納箱)
非常用エレベーターや特別避難階段
屋上に避難用ヘリポート
等が義務化されているからです。

 

平時では高層階で火災が発生しても、スプリンクラーが作動して火が大きくなるのを防ぐと同時に、消防隊が連結送水管によって内部から消火活動をすることにより延焼を防いているのです。

 

大地震の際はどうなのか?

では、大地震の際に、複数の部屋で火の手が上がったらどうなるでしょう。

 

大地震の際には、

停電するため、水が止まる可能性があります。

消防隊の消火活動も困難です。

 

先ほど、日本は厳しい耐火基準が設けられていると述べましたが、

建物の性能として、延焼を防ぐために、壁や床に求められている「耐火時間」は何時間かご存じでしょうか?

 

 

2時間」です。

壁や床が2時間、柱や梁は3時間等となっています。

※最上階から数えた建物の階数が20階以上の場合(建築基準法施行令第107条)

 

建築基準法施行令第107条

※建築基準法施行令第107条

 

別の言い方をすると、2時間以内に各戸で発生した火災を止められなければ、延焼する可能性があるということです。

 

発災直後でなくても、電気が復旧した際に発生する「通電火災」も大きなリスクです。

電気が復旧したら、スプリンクラーが作動する可能性もありますが、地震でその設備が損傷している可能性もあります。

水道は、電気が復旧したからといって、すぐには水を流しません。水道管が損傷がないことを確認する必要があるためです。

 

考え出したらキリがないし、考え過ぎなのかもしれません。

ですが、大きな地震があるたびに、「想定外」のことが起きています。

 

こんなことが実際に発生する可能性は大きくはないと思いますが、絶対にないことだとも思いません。

タワーマンションに住む人には、今後十数年で発生する可能性が高い「首都直下地震」や「東南海トラフ地震」への備えとして、こんな可能性もなくはないということを頭の片隅に入れていただきたいと思います。