とある日の事です。


「鼻紙、無いわ」と梅さん。


押し入れの中をガサガサ探していました。


と。


キッチンペーパーの予備を発見。


「これで良いわ」と数枚ちぎって畳むとポケットへ。


梅さんがいつも座っている座椅子の側にはBOXティッシュが置いてあります。


が。


いつの頃からか、梅さんはBOXからティッシュを何枚も出してポケットに入れています。

ポケットに入れて置くと安心の様です。


《洗濯の時にティッシュをいれたまま洗ってしまい、洗濯物がティッシュまみれになる被害が出たりしてますが》


梅さんはその大事なティッシュを使いきってしまったのです。


娘さんもまだ予備が有ると思っていました。


「それ、キッチンペーパーだよ」

「ポケットティッシュあるでしょ」と娘さん。


「ポケットティッシュ?」とキョトン顔になる梅さん。


娘さんからポケットティッシュを受け取っても、何処か納得していない様子でポケットにしまう梅さん。


しばらくすると。


「鼻紙、無くなったわ」と梅さん。


「ポケットの中にあるよ」と娘さん。


ポケットからポケットティッシュを出して、しばし眺めて。


「これね」と梅さん。


やはり。


何処か、納得していない様子です。


夕方。


娘さんは仕事帰りにBOXティッシュを買って来ました。


梅さんは娘さんからBOXティッシュを受け取るや否や。


何枚かを畳むとポケットへ。


そして。


満足げに安心した様子でした。


BOXティッシュとポケットティッシュ。


何が違うのか?


梅さんの妙なこだわり?に戸惑う、娘さんでした。


トホホ。

とある日の事です。


「それは捨てないで取って置きなさいね」と妙に得意気に梅さん。


その日、娘さんが仕事に行っている間にガス屋さんの定期点検がありました。

事前にお知らせも有り、梅さんが立ち会いました。

仕事から帰った娘さんが点検結果の用紙を見ていました。


で。


梅さんのこのセリフです。


「ガス屋さんが、置いておけって言ってたの」

「捨てないけど」と娘さん。


「ガス屋さんは言ってないけど、次の点検は4年後までないらしいわよ」

「捨てないなら良いけど」と何か残念そうに梅さん。



またある日。

娘さんは髪を染めていました。

蒸し暑い日で、Tシャツが汗でベタベタになりました。


と。


「あら➰」

「早く着替えないと風邪引くわよ」と世話焼き母さんが幼子に言う様に梅さん。


娘さんのTシャツを脱がせようと手を伸ばして来ます。


「ちょっと待ってよ」

「髪の毛、乾かしてから着替えるから」と慌てて梅さんの手を止める娘さん。



またまたある日。


その日、娘さんは遅番でした。


「明日、お弁当要るんでしょ」

「ご飯、洗って置こうか」と面倒見の良い母親がぐうたら娘に言う様に梅さん。


「明日は休みです」と娘さん。


「あっそ」とつまらなそうに梅さん。


またまたまたある日。


「足りなかったら、私の食べて良いわよ」


さも、食べ盛りの娘が夕飯時に『おかず足りない』と言った時の優しい母親の返しかの様に梅さん。


単に、自分が食べきれ無いだけなのです。


「無理して食べなくても良いよ」

「残してね」と冷静に娘さん。


何だか梅さん。

娘さんの世話がしたくてたまらない様子です。


が。


どうも今一つ。

上手く行きません。


それもそのはず。


梅さんは気づいていませんが(認めたくないのかも)。


すでに。

立場が逆転しているのです。


娘さんには。

《親に取っては子供は幾つになっても子供》と言う穏やかさより。

それを手放すと、自分の存在意義を失うとでも思っている様な必死さを感じます。


梅さんが実際にはどう思っているのかはわかりませんが。


ただ。


娘さんは、梅さんの言動がとてつもなく重たくのし掛かって来る様に感じるのです。


しんどいわ➰。


トホホ。

とある日の事です。


朝食後。

娘さんが食器を洗おうとすると。

梅さんの使った皿がありません。


「お母さん、皿は?」と娘さん。

「私は皿なんて使って無いわよ」と梅さん。

「パン乗せてた皿よ」と娘さん。

「知らないわよ」

「皿なんて使った事無いわよ」と梅さん。


娘さんが戸棚を開けると。

案の定。

そこには、使用済みの証(パンの跡)が付いた梅さんご愛用の皿が有りました。


「何で、洗わずに片付けるの」とイライラ声の娘さん。


「知らないわよ」一点張りの梅さん。


多分。

本当に《知らない》のでしょう。

見事に忘れている様子です。


いつの頃からか。

梅さんは、

『知らない』

『わからない』

『触ってない』で逃げ切ろうとします。


そして。


娘さんが問い詰めると。


『そんな事どうでもいいじゃない』と、止めをさします。


自分が忘れた事への反省も謝罪も一切ありません。


娘さんはイライラの持って行き場を失い、余計イライラしてしまいます。


梅さんの症状は下降線を辿る一方です。


娘さんのストレスも貯まる一方です。


『私、大丈夫かなぁ➰』


心配しか無い娘さんでした。


トホホ。