回転寿司、ネタ切れ老人
75歳の老人が、久しぶりに回転寿司へやって来た。
席に座るなり、目を輝かせた。
「今日は食うぞ。食期限……いや、消費期限が切れる前にな!」
ところが、皿を取ろうと待っていると――
マグロ、なし。
サーモン、なし。
エビ、なし。
イクラ、なし。
「おいおい、どうしたんだ?」
レーンを回ってくるのは、なぜかガリと空の皿ばかり。
老人は店員を呼んだ。
「すみません、寿司のネタが全部なくなってるんだけど?」
店員が申し訳なさそうに答えた。
「申し訳ありません。ただいまネタ切れです」
老人はしばらく黙っていた。
そして、レーンを見ながらポツリ。
「……回転寿司なのに、寿司が回ってないじゃないか」
店員が言った。
「お客様、今日は何を召し上がりますか?」
老人は胸を張った。
「決まってるだろ!」
そして、レーンを指差して――
「ガリを一皿ください。
……ワサビも付けて。
今日の俺の寿命も、ネタも、もう切れてるからな!」
店員は笑いをこらえながら、ガリを持ってきた。
老人は一口食べて、
「うん。うまい!」
そして満足そうに言った。
「寿司は食えなかったけど、今日はネタになったな。」
