れーらの気侭小説 -3ページ目

れーらの気侭小説

フィクション小説を書いていましたが、醒めてしまい休止中です。


∮前回までのあらすじ


敵を倒した前田と高城はゴールへと向かう。

ゴール直前、どこかにいるであろう高橋に向けて言葉を残した前田に、高城は宣戦布告をし、前田もそれを受けて立つと約束して火山の中に消えていった。

エトナの城に立ち寄った篠田たちは、王と出会った際に偶然リニアを発見。

別れた仲間たちと合流するべく、一路リニアへと向かうのだが……。


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「見間違いだったんじゃないのか?」

「あれー?おかしいなー」

リニアのあった場所に向けて移動してきたつもりの三人だったが、肝心のそれはどこにも見当たらない。

小森は手を組んだり、足踏みをしたり、とにかく落ち着かない様子だ。

「私たちがこっちに来る途中にどこか行っちゃったのかもね」

あたりを見渡してみても、やはり城の窓から見たのと同じ場所である。

ただ一つ違うのはそこからリニアがなくなっていること。

「ならもうあの山のほうに行こう。何か分かるかもしれない」


ブーン。

『第3ステージ生存者45名中、残り23名。脱出者18名』


移動を始めようとした三人にペットから知らせが届いた。

「一人脱落したみたいだな」

言いながら先を急ごうとする秋元だったが、篠田は着いてこず、その場に止まったままだ。

「どうした?早く行かないと」

「少しだけ待って」

「は?何言って――」

「何か考えがあるんですよね」

秋元の言葉を遮るように、小森が篠田の前に出た。

真剣な目で見る小森に、篠田は浅く頷く。

「なら待ちましょう」

「ったく、しょうがないな。少しだけだぞ」

渋々了承した秋元はその場に腰を下ろした。

篠田はどこか遠くのほうを見たまま、「ありがとう」と言った。


腕を組んで仁王立ちをしていた篠田だが、何かに気づいて首を動かした。

「うわっ、なんだこれ!!」

こちらに近づいてきた火の玉を払うように、秋元は手を振った。

小森は少し離れて様子を見ている。

「手間取らせちゃってごめん。行こう」

篠田がそれに手を触れると、火の玉は姿を消した。

(麻里子の能力か何かなのか?)

聞くのも煩わしい。

秋元はその疑問を抱えたまま、歩く篠田の背中についていった。

行き先はやはり、遠くに聳える火山だ。



それより少し前のことになる。

篠田たちが探していたリニアは、やはりそこにあった。

少し前までは。


しばし休息についていたリニア組の面々は、昨夜十分にとれなかった睡眠を補うために、十分に体力のある者が交替で見張りについていた。

「さや姉、うち、ほんまに選抜に入れるんやろか?」

リニアの外で、地に生えた雑草を引き抜きながら山田は不安を漏らしていた。

「アホ!もうアンダーには入ったんやぞ。不安なのはわかるけど、うちらは皆の分背負ってんねん!ここでがんばらな」

「皆の分……そうやね」

そう言いながらも、決して山田は不安が晴れたわけではなかった。

これまでに実感した壁の高さは異常だ。

自分より強い者に出会ったかと思えば、さらに強い者が現れてその強い者を倒していく。

そんなこと、今までの経験からも分かっていたはずなのに。

(AKB48の選抜の壁は思ったよりもずっと高かったわ……)

山田が車両の尾にまわったとき、車内から喜ぶ声が聞こえてきた。

「なっちゃんが、なっちゃんが目を覚ました!」


中に入ると、眠っていたメンバーも起きて一両目に駆けつけていた。

ただ一人、変わらず目を燃やしていた者もいたが。

「ほらほら。寝起きなんだからそんなに騒ぎ立てないでよ」

群がってきたメンバーに対して、宮崎がしっしっと払う仕草をする。

だが、平嶋本人は笑ってまたメンバーを集めた。

「ごめんね、気を失っちゃって。でもなんとか大丈夫だから」

小柳の尽力もあって、全快とまではいかずともその回復は早かったようだ。

能力を使って、またリニアをゆっくりと動かし始めた。


(ん、なっちゃん起きたんだ)

大島はアイマスクを取ると、外の景色が動いていることに気がついた。

それと同時に何か不穏な気配も感じ取った。

(……何か来る!!)

「皆、前に集まれ!!」

起き上がった大島が突然声をあげた。

状況を理解できていないメンバーはざわつきながらもゆっくりと前に集まり出す。

ただ、指原だけはそれに気づかず、車両の一番後ろで壁にもたれかかってペットをいじっていた。

「指原早く来い!」

「え、何?」

「もう、仕方ないな」

仁藤が駆け寄って、指原の腕を引っ張り、背中を前に向けて強く押したときだった。

「……え?」

車両が突然真っ二つに別れ、仁藤だけがそこに残された。

走り続けるリニアと彼女はどんどん離れていく。

急に押された指原は、床に倒れこんでいてまだそのことに気づいていない。

「なっちゃん、止まって!」

リニアを走らせる平嶋に止めるよう大島が指示したが、それもすぐ撤回されることとなる。


ブーン。

『第3ステージ生存者45名中、残り23名。脱出者18名』


離れていく仁藤に誰かが近づき、その手で彼女を倒した。

遠すぎて誰かまでは分からなかったが、能力を使っていたことは確かだ。

メンバーと見て間違いない。

「ごめん、なっちゃん。やっぱり全速力で逃げて!」

「ええ!?」

未だ状況を理解していなかった平嶋は、その切迫した空気を読み取って、リニアの足を速めた。


一方で呆然とその様子を見ていた指原は、今しがた起きた事態をやっと理解した。

ふざけて自分を強く押したと思われる仁藤は、何かに切られたように分かれた車両に一人だけとり残され、何者かの手にかけられ敗退した。

(もしかして、私を守るために……?)

自分を助けるために、また一人、犠牲になって消えた。

「萌……乃……?萌乃おおおぉぉぉ!!!」




to be continued...