∮前回までのあらすじ
敵を倒した前田と高城はゴールへと向かう。
ゴール直前、どこかにいるであろう高橋に向けて言葉を残した前田に、高城は宣戦布告をし、前田もそれを受けて立つと約束して火山の中に消えていった。
エトナの城に立ち寄った篠田たちは、王と出会った際に偶然リニアを発見。
別れた仲間たちと合流するべく、一路リニアへと向かうのだが……。
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「見間違いだったんじゃないのか?」
「あれー?おかしいなー」
リニアのあった場所に向けて移動してきたつもりの三人だったが、肝心のそれはどこにも見当たらない。
小森は手を組んだり、足踏みをしたり、とにかく落ち着かない様子だ。
「私たちがこっちに来る途中にどこか行っちゃったのかもね」
あたりを見渡してみても、やはり城の窓から見たのと同じ場所である。
ただ一つ違うのはそこからリニアがなくなっていること。
「ならもうあの山のほうに行こう。何か分かるかもしれない」
ブーン。
『第3ステージ生存者45名中、残り23名。脱出者18名』
移動を始めようとした三人にペットから知らせが届いた。
「一人脱落したみたいだな」
言いながら先を急ごうとする秋元だったが、篠田は着いてこず、その場に止まったままだ。
「どうした?早く行かないと」
「少しだけ待って」
「は?何言って――」
「何か考えがあるんですよね」
秋元の言葉を遮るように、小森が篠田の前に出た。
真剣な目で見る小森に、篠田は浅く頷く。
「なら待ちましょう」
「ったく、しょうがないな。少しだけだぞ」
渋々了承した秋元はその場に腰を下ろした。
篠田はどこか遠くのほうを見たまま、「ありがとう」と言った。
腕を組んで仁王立ちをしていた篠田だが、何かに気づいて首を動かした。
「うわっ、なんだこれ!!」
こちらに近づいてきた火の玉を払うように、秋元は手を振った。
小森は少し離れて様子を見ている。
「手間取らせちゃってごめん。行こう」
篠田がそれに手を触れると、火の玉は姿を消した。
(麻里子の能力か何かなのか?)
聞くのも煩わしい。
秋元はその疑問を抱えたまま、歩く篠田の背中についていった。
行き先はやはり、遠くに聳える火山だ。
それより少し前のことになる。
篠田たちが探していたリニアは、やはりそこにあった。
少し前までは。
しばし休息についていたリニア組の面々は、昨夜十分にとれなかった睡眠を補うために、十分に体力のある者が交替で見張りについていた。
「さや姉、うち、ほんまに選抜に入れるんやろか?」
リニアの外で、地に生えた雑草を引き抜きながら山田は不安を漏らしていた。
「アホ!もうアンダーには入ったんやぞ。不安なのはわかるけど、うちらは皆の分背負ってんねん!ここでがんばらな」
「皆の分……そうやね」
そう言いながらも、決して山田は不安が晴れたわけではなかった。
これまでに実感した壁の高さは異常だ。
自分より強い者に出会ったかと思えば、さらに強い者が現れてその強い者を倒していく。
そんなこと、今までの経験からも分かっていたはずなのに。
(AKB48の選抜の壁は思ったよりもずっと高かったわ……)
山田が車両の尾にまわったとき、車内から喜ぶ声が聞こえてきた。
「なっちゃんが、なっちゃんが目を覚ました!」
中に入ると、眠っていたメンバーも起きて一両目に駆けつけていた。
ただ一人、変わらず目を燃やしていた者もいたが。
「ほらほら。寝起きなんだからそんなに騒ぎ立てないでよ」
群がってきたメンバーに対して、宮崎がしっしっと払う仕草をする。
だが、平嶋本人は笑ってまたメンバーを集めた。
「ごめんね、気を失っちゃって。でもなんとか大丈夫だから」
小柳の尽力もあって、全快とまではいかずともその回復は早かったようだ。
能力を使って、またリニアをゆっくりと動かし始めた。
(ん、なっちゃん起きたんだ)
大島はアイマスクを取ると、外の景色が動いていることに気がついた。
それと同時に何か不穏な気配も感じ取った。
(……何か来る!!)
「皆、前に集まれ!!」
起き上がった大島が突然声をあげた。
状況を理解できていないメンバーはざわつきながらもゆっくりと前に集まり出す。
ただ、指原だけはそれに気づかず、車両の一番後ろで壁にもたれかかってペットをいじっていた。
「指原早く来い!」
「え、何?」
「もう、仕方ないな」
仁藤が駆け寄って、指原の腕を引っ張り、背中を前に向けて強く押したときだった。
「……え?」
車両が突然真っ二つに別れ、仁藤だけがそこに残された。
走り続けるリニアと彼女はどんどん離れていく。
急に押された指原は、床に倒れこんでいてまだそのことに気づいていない。
「なっちゃん、止まって!」
リニアを走らせる平嶋に止めるよう大島が指示したが、それもすぐ撤回されることとなる。
ブーン。
『第3ステージ生存者45名中、残り23名。脱出者18名』
離れていく仁藤に誰かが近づき、その手で彼女を倒した。
遠すぎて誰かまでは分からなかったが、能力を使っていたことは確かだ。
メンバーと見て間違いない。
「ごめん、なっちゃん。やっぱり全速力で逃げて!」
「ええ!?」
未だ状況を理解していなかった平嶋は、その切迫した空気を読み取って、リニアの足を速めた。
一方で呆然とその様子を見ていた指原は、今しがた起きた事態をやっと理解した。
ふざけて自分を強く押したと思われる仁藤は、何かに切られたように分かれた車両に一人だけとり残され、何者かの手にかけられ敗退した。
(もしかして、私を守るために……?)
自分を助けるために、また一人、犠牲になって消えた。
「萌……乃……?萌乃おおおぉぉぉ!!!」
to be continued...