れーらの気侭小説 -4ページ目

れーらの気侭小説

フィクション小説を書いていましたが、醒めてしまい休止中です。


∮前回までのあらすじ


ゴールを発見して火山を登る玲奈たち一行。

途中、思わぬ戦いにも捲き込まれたが、玲奈の活躍により窮地を脱する。

その戦いにより自分に秘められた正と負の可能性を見出した玲奈は、同時にこのイベントへの不安も大きくした。

だがその答えはこの先にあると信じ、五人一緒に次のステージへと旅立って行ったのであった。


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「ふぅ、これで全員かな……」

「みたいですね」

前田と高城は手についた血や土を、高城の水の能力で洗い流した。

二人のまわりには黒焦げの男や血だらけの男たちがざっと二十人倒れている。

「この人たち、城で見た人たちとはなんか違うみたいですね」

高城の察した通り、この男たちは城の兵士ではない。

ルイマリーの連れてきた軍の一部だ。

それも魔法を使うものだから二人を苦戦させた。

だがそれが二人の遠慮をなくしたのも事実。

ある意味幸運だったのかもしれない。

能力が使えるようになったのもあって、二人は全力で応戦した。


「また人が来ないうちに行きましょうか」

「そうだねー」

高城は歩き出し、しばらくして後ろを振り返った。

「前田さん?」

前田はさっきいた場所で座り込んだままだ。

「あきちゃー、おんぶ~」

(……えええぇぇ)

手を伸ばしてぶらぶらと振り、おんぶをせがんでいる。

さっきまでの頼もしい前田敦子はどこにいったのかと、高城はそう思った。

「もう、仕方ないですね」

高城は走って戻り、前田を背に乗せた。

願いが叶った彼女はきゃっきゃと子どものようにはしゃいでいる。

「ワープしますよ。ちゃんとつかまっててくださいね!」


ワープしてすぐに火口にたどり着いた。

前田は高城の背の上から地上を見下ろす。

火山の周り、森のほうでは多くの戦いが起こっている。

見上げると、空でも魔法を駆使して戦う者が大勢いた。

(みんなまだ戦ってるのかな)

「たかみな、大丈夫かな……」

前田がポツリと零した一言に高城は気づいた。

そして笑って言う。

「たかみなさんならきっと大丈夫ですよ!」

「そうだよね。ありがと」

言いながら、前田は下ろしてというように足をぶらぶら揺らした。


地に足をつけて一歩前に出た前田は島の遥か先まで見渡す。

「センター、取りに来いよ。みなみ」

その前田の目はまたさっきの目をしていた。

頼もしいどころか他者が思わずたじろいでしまうような凄みを秘めた目。

いつの間にか高城の背にいた無邪気な前田は姿を消していた。

「私も立候補していいですか?センター」

「あきちゃも?喜んで!」

振り返った前田と目を合わせた瞬間、高城は体にビリリと電気のようなものが走るのを感じた。

前田本人はそれをなんでもないことのようにふふと笑っている。

(やっぱりこの人だ。倒すべきは……!!)


「じゃあ、行こうか。次のステージに」

「はい!」

高城は強く頷き、火山に飛び込む前田の背中を追って地面を勢いよく蹴り出した。

そして垣間見た。

石畳の先にそびえる大きな会場を。


ブーン。

『第3ステージ生存者45名中、残り24名。脱出者18名』



島に入ってうろうろと歩き回っていた篠田たち三人は、エトナの城にたどり着いていた。

出払ってしまっているのか、城中に兵士の姿はほとんど見受けられない。

中にある小さな町には住民だろう人の姿は見えるのだが。

「おい、もう18人もゴールしてる。急がないとまずくないか?」

「うーん、そうだねー」と、篠田は気のない返事を返すものだから、秋元はさらに焦りを増した。

秋元が探知を使っても周りには誰もいない。

つまりゴールはここの近くではないということになる。

(城の中をゆっくり歩き回ってる場合じゃないだろ!)


ひたすら上へ上へと歩く三人は、やがて立派な扉の前にたどり着いた。

扉を開くと真っ赤な絨毯がまっすぐに伸びていて、その先にはこれまた宝石などであしらった立派な椅子があり、一人の人が座っている。

「ねぇ、あれって」

「王様だろうね」

篠田は笑みを浮かべる。

後ろに立っていた小森は、背を向ける篠田から「うくく」という声が漏れているのが分かった。

(……?)

篠田は笑いを声に出すまいとしていたが、どうやらそれも簡単なことではないらしい。

なにせ、王様だろうその人の風貌はどう見ても……。

「何者だ!」

兵士が四人、三人を囲むようにしてやって来た。

「よせ。客人だ」

「はっ!」

その声に、構えた兵士と秋元の拳はそっと解かれた。

声を発したのは椅子に座っている人物。

兵士も下がり、その人物はじっとこちらを見ている。

「王がお呼びだ。前へ参れ」

兵士に促され、三人は前に進んだ。

やはりその人物はこの国の王だったようだ。


「そなたたち、ポアズの使いか」

「はい」

「おい!」

王の問いかけに篠田はそうだと答えたが、もちろんそうではない。

肩に手をかけてきた秋元を彼女は制した。

「任せて」と他の誰にも聞こえない声で呟いて。

「そうか。望みは捕らえた魔女たちの解放か?」

「はい」

むぅと王は唸った。

椅子から腰を上げ、窓の傍に立つ。

「戦いの状況は聞いておる。確かに戦局はこちらの不利と言わざるをえまい。共闘となれば致し方なし、か。よし」

王は兵士を一人呼び寄せた。

「捕らえた魔女をすべて解放するのだ。事情を話した後でな」

「はっ!」と威勢よく返事をしたその兵士は、他の兵士を引き連れて部屋を出て行った。


王は三人を窓辺に呼んだ。

「ほれ、空中戦は目に見えて不利じゃろう」

窓の外を眺めると、遠くに見える火山の方で争いが起こっているのが分かった。

(これ……)

小森は窓のすぐ傍にあった棚に何枚もの写真が飾ってあるのを見つけた。

その中には目の前にいる王と、秋葉原の劇場支配人によく似た人物の写った一枚もあった。


「じゃあ、私たちも戻ります」

「うむ。くれぐれも気をつけるのじゃ」

篠田に続いて二人も部屋を出た。

「麻里子、何か分かったのか?」

「ん?まあね~」

「なんだよ。もったいぶらずに教えろよ!」

秋元の目は輝きを取り戻していた。

さっきまで見えていた焦りの色ももうすっかり消えている。

「私も気になります!教えて下さい!」

小森もせがむ。

「うん、さっき外を見たときね、リニアがあったのよ。ほら、めーたんと戦う前まで乗ってた」

「あれか!」

「ちょっと遠回りになるけど寄ってみようか」

城を出た三人は、外に見えたリニアを目指して歩き出した。




to be continued...