仮面ライダー響鬼・異伝=明日への夢= -5ページ目

サボる響鬼

奈々ちゃんさりげなく爆弾発言!?

弐の段 参 『其々の夜明け=前編=』

 視界が朱に染まっている。


 黒と赤に彩られた世界を、あてどなく彷徨い歩く。


 その手には赤く染められた刃を。


 足元には幾多の屍を。


 天が黒い涙を流し、降り注ぐ雨がその身を黒く染め上げていく。

 

 ふと 天を仰ぐ。



 そこには



 黒い涙を流しながら笑う



 自分の顔があった──











 ひとみは汗でべったりとした髪を手ですいた。


 ひどい夢だった。 だが、大抵の夢がそうであるように、その夢で見た情景は急速にひとみの記憶から消えていく。

 ただ、こめかみに鈍い痛みがあり、軽い嘔気をおぼえる。


 ──そういえば



 自分は昨日、従兄の先輩の墓参りに行って……どうやって帰ってきたのだろう?

 途中からの記憶が全く無い。

 

(気持ち悪い……)



 冬だというのに、ひどい寝汗だった。 下着が汗で肌にまとわりついている不愉快な感触。

 ふと時計を見ると、まだ六時半だった。今ならシャワーを浴びるくらいの時間は取れるだろうか。



(風邪ひいちゃうかな……)



 ぼんやりとそう考えるが、寝汗の不愉快さはいかんともしがたく、暖かくして行けば良いかと自分を納得させて、ひとみは浴室へ向かった。


「ふうっ」



 汗を洗い流し、ひとみはひと心地ついた。目覚めた時の不愉快さは嘘のように失せている。

 気分は一転して爽快だった。

 ヒーターをつけて、鏡台の前で早速髪を乾かす。



「ひとみー。早くしないと風邪ひくわよー」



「はーい」



 母の言葉に生返事を返しながら、流れる絹のような髪を梳(くしけず)る。

 他愛も無い会話と日常。 だが、その時ひとみは奇妙な違和感を感じた。



「あれ?」



 前髪をかきあげると、額に小さな親指大のあざのようなものが見えた。

 鏡に顔を近づけ、目を細めて見つめてみる。 そこには見ようによっては、鬼の顔にも似たものがうっすらと浮かんでいる。 気になって恐る恐る触ってみるが、特に痛みは無い。





「……どっかでぶつけちゃったのかな?」



 記憶を辿ってみるが、どうにも記憶がもやがかかったように曖昧だ。 ただ妙に胸の中を弄(まさぐ)られるような、不愉快で不安な感情が鎌首をもたげてくる。



「ひとみーっ」



「はぁあい!」



 母の呼び声に、不安な気持ちを振り切るようにして、ひとみは脱衣場を出た。











 後には、鏡の中で三日月の様な笑みをたたえている、ひとみの姿が残されていた──

 




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