2009.09.06 大阪朝刊 21頁 大阪総合 写有 (全1,776字)
コミュニケーションの原点は、自分の思いを自分の言葉で相手に届けることです。自分が100%伝えているつもりでも、相手にどれだけ伝わっているか難しいですね。「伝えるイコール伝わる」になればいいけど、みんなイコールにならなくて悩んでいるんじゃないでしょうか。
《石川さんが教授を務める短期大学部広報学科では、出版、広告、放送、映像などのメディアや演劇についての専門的な教育を実施。石川さんが担当する授業のひとつ「アナウンス演習」では、アナウンサー志望だけでなく、演劇やデザイン美術などを勉強する学生たちも集まり、正しい発声、発音といったアナウンスの基礎や話し方を学んでいる》
「伝達ゲーム」ってあるでしょ。10人ほど並んで順番に伝え、最初の内容がちゃんと伝わったかというゲームね。これは統計上、50%から30%しか伝わらないそうなの。なぜだと思う?
まず、声が小さかったり、口の中でもごもご言ったり、ということがあります。発音が悪く、滑舌が悪いんですね。でも、これは直せます。発声練習でね。「あえいおう」と母音を発声して口を大きく開けて口の周りの表情筋を伸ばすと、滑舌がよくなります。また、腹式呼吸のやり方を覚え、横隔膜を強くすることで大きな声が出るようになります。ここまではハードの部分ですね。
ソフトの部分は話の内容ですが、書き言葉を話し言葉に直すことが大切です。誰にでもすぐ分かる、はっきり分かるように気を配らなければなりません。
例えば同音異義語。「貴社の記者が汽車で帰社」。どうですか? 見たらすぐに分かりますが、聞くと考えないといけないので、スムーズに伝わりにくいですね。だからなるべく使わない。専門用語や、仲間うちの言葉もそうです。あと、漢語は和語に直して話しましょう。「通知」を「お知らせする」にするとかね。難しい言葉を使わないといけないときは、言い換えるなりして補足します。テレビ、ラジオのニュースでもそうでしょ?
「はっきり分かる」ということでは、例えば私が「高い木」と言うと、みんなひとりひとり違う木を想像すると思います。「コマーシャルの『♪この木何の木』の木」とか、だれもが知っている木を言うと、みんな同じものを想像するでしょうけど。「自分が分かるから相手も分かるだろう」という思い込みはよくないですね。コミュニケーションには相手がいますから、相手のことを思いやって言葉を選ぶんです。
また、話のネタの引き出しをたくさん持たないと、会話が広がりません。いろんな人に会って話を聞いて、ものを読んで見て触れて、いろんなことを勉強して、引き出しを広げていくことが大事。それによってコミュニケーションが長く続き、広がります。
あと、大切なのが「非言語」の部分。所作や、動作や、立ち居振る舞いです。言葉だけでは相手に伝わらないことも、非言語の部分が加わって初めて伝わることがあります。例えば「こんにちは」という言葉に、非言語のおじぎ、そして笑顔が入ると会話として成り立つわけです。
《石川さんの授業は実技指導も多い。発声や発音はもちろん、「非言語」のおじぎの仕方、表情のつくり方なども指導する。「どんな仕事でもコミュニケーションは必要。社会に通用する話し方を身につけてほしいですね」と話す》
そして、コミュニケーションにとって最も大切なのが「体温のある言葉」を使うこと。それがパーソナリティーにもつながります。相手を思いやる気持ちは言葉になって現れます。だから、体温のある言葉を相手に投げかけてあげてください。そうすることで「伝えるイコール伝わる」に近づくでしょう。
(構成・山口淳也)
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【プロフィル】石川豊子
石川豊子(いしかわ・とよこ) アナウンサー。鹿児島テレビ放送の局アナを経てフリーとなり、毎日放送「奥さん2時です」、NHK「きょうの料理」の司会など、在阪のテレビ、ラジオ各局で活躍。平成7年のAPEC大阪会議プレスセンター「三千家お茶席」など、イベントプロデュースも手がける。「石川豊子ことば塾」主宰。平成19年4月、大阪芸大の放送学科講師となり、20年4月、短期大学部広報学科教授・芸大放送学科兼担教授に就任した。
撮影・塚本健一
産経新聞社