映画に「ダイゲイ」旋風 大阪芸大出身監督が台頭

2008.07.03 東京夕刊 9頁 夕刊be木曜5面 写図有 (全1,252字) 













 映画界に「ダイゲイ」旋風が吹き荒れている。橋口亮輔に山下敦弘、熊切和嘉……。オリジナリティーあふれる作風で知られる彼らは、いずれも大阪芸術大で学んだ経験を持つ。メジャー作品とは一線を画し、映画祭などで高い評価を受ける「ダイゲイ」の監督たち。先輩の活躍に刺激されてか、若手の台頭も著しい。(高橋昌宏)



 ある夫婦の10年の軌跡を追った橋口監督6年ぶりの新作「ぐるりのこと。」が大ヒットを記録。山下監督は「天然コケッコー」「松ケ根乱射事件」が昨年のキネマ旬報ベストテンにダブル入選。同年代の柴田剛は、脳性まひの男性が連続殺人事件を起こす「おそいひと」で障害者を主役に起用して反響を呼んだ。



 最近にわかに注目を集めているのが25歳の新鋭、石井裕也監督だ。卒業制作した「剥(む)き出しにっぽん」が、昨年のぴあフィルムフェスティバル(PFF)のグランプリを受賞。香港で開かれるアジア・フィルム・アワードのアジア新人監督大賞に選ばれ、トントン拍子で商業映画デビューが決まった。



 大阪芸大のキャンパスは大阪府の郊外、河南町にある。「山に囲まれ、外界から遮断された世界」と石井監督は言う。商業映画の製作現場が多い東京と違い、「PFFなどで評価される以外に、映画界への道は開けない」との不安があるという。



 大阪芸大は実学優先で、学生に現場経験を積ませることに力を入れてきた。石井監督も1年生で先輩の卒業制作に参加。この作品がPFFで準グランプリに選ばれた。「演出術、人心掌握術に加え、ここまでやれば賞を狙えるというレベルを学べた」。石井は自主製作を中心にすでに20本近くを監督している。



 本田隆一監督は、栗山千明主演の「GSワンダーランド」の公開を11月に控えている。「山の中で格好つけずにやれた」のが良かったと話す。「レベルの高い作品を作る人を間近に見て、競い合う中でテーマが先鋭化していく」。



 大阪芸大のこうした環境を整えたのが、映画監督の中島貞夫だ。教授に就任した87年以来、今春に退くまで「大学のスタジオ化」を唱えてきた。「カリキュラムに押し込めるのではなく、エロや暴力がテーマでも、長くかかっても、自由に作らせた」。卒業制作を「名刺代わり」と全力投球させた。「完成したら、海外を含めて映画祭のコンペに出すように指導しました」



    ◇



 5、6日、東京国際フォーラムで「ダイゲイ フィルム アワード」が開かれる。大阪芸大主催。今春卒業した学生の作品24本が上映されるほか、石井、柴田両監督らのトークショーも。入場無料。



 ■大阪芸大で学んだ主な映画監督(中退含む)



 庵野秀明 「新世紀エヴァンゲリオン」



 橋口亮輔 「ぐるりのこと。」「ハッシュ!」



 元木隆史 「プウテンノツキ」「ピーカン夫婦」



 本田隆一 「サクゴエ」「GSワンダーランド」



 柴田剛  「おそいひと」「青空ポンチ」



 熊切和嘉 「鬼畜大宴会」「青春☆金属バット」



 山下敦弘 「松ケ根乱射事件」「天然コケッコー」



 呉美保  「酒井家のしあわせ」



 石井裕也 「剥き出しにっぽん」「ばけもの模様」



 【写真説明】



 石井裕也監督



 本田隆一監督



 石井裕也監督の「ばけもの模様」


産学協同で連ドラ制作 大阪芸大と独立U局3局 現役学生が出演、プロが後押し

2008.09.12 大阪夕刊 8頁 写有 (全981字) 













 KBS京都、サンテレビ、テレビ神奈川の3局と、大阪芸術大学が産学協同で制作する連続ドラマの第6回「ブロードキャストASUKA」が、10月から独立U局8局で放送される。同大学教授で映画監督の大森一樹の監修で、学生キャスト、スタッフたちが学内のセット撮影やロケに奮闘中だ。名取裕子を始め、毎回プロの俳優らがゲストで出演、学生を後押しする。(満田育子)



 七つのエピソードを全13話で構成し、12月まで週1回、1話(30分)ずつ放送する。映画、放送界で活動する卒業生らが監督、脚本、撮影を担当。現役の映像学科の学生80人がスタッフを務め、オーディションで選ばれた学生が出演する。



 テレビ局のディレクターを目指す大阪芸大生が主人公。同級生と、テレビ番組企画コンテストに応募するネタを探すうち、学内で数々の“怪奇現象”や不思議な話に遭遇し、謎解きに乗り出す、という筋立て。



 大学近くのアンティークショップのオーナー役で原田伸郎がレギュラー出演。名取のほか田中美里や川上麻衣子、元プロボクサーの井岡弘樹らが登場する。



 主演の岡田啓人さんは舞台芸術学科3回生。「大先輩たちの仕事を生の現場で学べて夢のよう。持てる実力を出し切りたい」と話す。



 大森や同大学教授の脚本家、西岡琢也と仕事をした縁で、2人が監督、脚本を担当するエピソードに出演が決まった名取は、「学生映画出身の大森監督らしい面白そうなドラマ。現役の学生との仕事を大いに刺激にしたい」と期待する。



 2003年に始まったドラマ制作は、昨年までは映像学科で教授を務めた映画監督の中島貞夫が監修。当初は学科内での取り組みだったが、大学全体に広げ、一昨年からはハイビジョンで撮影している。



 退職した中島に代わり、監修を引き継いだ大森は、「回を重ね、番組制作を体験した学生の間でノウハウが受け継がれている。学生の映画製作が盛んな米国の大学では、プロの俳優が出演しており、映画にできるくらい質の高いドラマにしたい」と話している。



 KBS京都は10月5日から毎週日曜午後10時、サンテレビは同7日から毎週火曜午後8時54分に放送。テレビ神奈川と奈良テレビ、テレビ和歌山、岡山放送、千葉テレビ、三重テレビでも放送する。



 写真=6回目の産学協同ドラマの制作発表に臨む(左から)大森、名取と岡田さんら(大阪市内で)



 写真=岡田さん(中央)が出演する番組の一場面




2008.12.11 大阪夕刊 4頁 大文化 写図有 (全582字) 













 「朝日21関西スクエア」の懇談会がこのほど朝日新聞大阪本社であり、委員の武谷なおみ・大阪芸大教授(イタリア文学)=写真=が「イタリアに学ぶスローライフ」について話した。今春訪ねたシチリア島のエピソードなど交え、時間に育まれるイタリアの生活と文化を語った。



 武谷さんは70年代に約4年半、イタリアに暮らした経験がある。



 まず、英米両国でも暮らした伊紙記者の著書を紹介。そこには、食べ物に必要なのは、英「栄養」、米「満腹」、伊「おいしさ」であり、結婚についての影響力ある助言者は、英「友人」、米「弁護士」、伊「マンマ(母)」と書いてあるという。「イタリア人の多くは、家族、休暇が大事」と解説した。



 そんなイタリアの中でも、南部のシチリア島は「国内でも特にスローな地域」という。島の女子学生たちに、源氏物語や村上春樹の『海辺のカフカ』について質問され、驚いたエピソードも披露した。子どもの暮らしもゆったりで、「午前中は授業。昼食に帰宅して午後は自宅で読書、という生活は高校生でも珍しくない。夏休みは約3カ月あり、入学・卒業式はないのが普通」。



 「イタリアは、のらくら者で働かない人々の国と思われがちだが、それは間違い」と武谷さんは言う。「彼らは、自分の頭でたっぷり考える。イタリアのスローライフは、日本人が忙しさにかまけて考える時間すら失っている様を照らしだしている」