ドラマ 吉原炎上 観月ありさ ネタバレ~その6
明治44年 春のある日。
この日、ついに紫の花魁道中が実施される。
吉原のすべての女郎屋が協賛しての初の大規模なイベントだけあって、町中がお祭り気分で華やいでいた。
「その日まで生きていられるかな私。」と心配していた雪乃も、小康状態を保っており、2階に宛がわれた自室の窓から様子を見ていた。
ゆっくりと紫が歩き出す。
雪乃に「久ちゃんは、どうして花魁道中をやりたいなんて言い出したの?」と問われた時、久野はこう答えた。
「花魁道中は、私たちの叫びみたいな気がするから。」と。
お金で品物のように売られて来た女たちの叫び。
女を売り買いする人たちへの、
蔑んだ目で見る世間への、
蔑んでいる癖に、買う男たちへの叫び。
物のように人から扱われ、売り買いされ、見下されても、私たちはちゃんと生きているんだ。…こんなに綺麗で、こんなに優雅に命を輝かせて、逞しく生きている。
そう世間に知らしめたい、女の心の叫びだと。
見てみなよ、ほら。
女の生血を吸って成り立っているこんな赤い地獄の中だって、あたしたちは、こんなに綺麗な花を咲かせられるんだ。
綺麗な、綺麗な、花。
傷つきながら咲いて、そして散って行った。
一人、一人の女たちの哀しみを抱えながら、
紫は、桜、舞い散る道行きの一歩、一歩を進めた。
通り過ぎて言った、さまざまな花魁たちの面影が、紫の胸に去来する。
彼女たちと共に、歩いているような気持ちで、胸を張って、紫は町中を練り歩いた。
吉原の町に火の手が上がったのは、その日の夜遅く、みなが寝静まった頃の事であった。
気性の激しい鶴尾が、紫への妬みから付け火をしたのだ。
雪乃は自ら炎の中へ進んでゆく。
花魁道中のつもりなのだ。
焼け落ちた柱が燃え上がり、久野と雪乃の間を遮り阻んだ。
最後に「久ちゃんがいたから生きてこれた。ありがとう。」と礼を述べ「あたしの最後の花魁道中、見ててね。」と言って、炎の中へ消えて行った。
久野は「雪ちゃん!」と、何度も名を叫び助けようとしたが、男衆らに無理やり外へと連れ出された。
火事は瞬く間に吉原中に燃え広がり、焼きつくし、
廓のほとんどは焼け落ち、徳川時代から、およそ300年続いた吉原の町は見る影もなくなる。
翌、明治45年。
一応、吉原は再建されたが、昔の面影はどこにもなく、
花魁と呼ばれた女たちは、娼婦としか呼ばれなくなった。
火事から3年後の大正2年 春。
久野は、大倉の家を訪ねた。
自分の力で借金を返し終えての事である。
3年も経てば、もう結婚されて、子供さんの一人や二人、授かっておられるかもしれないのは承知の上で。
緊張して、目もマトモには合わせられず、深く平伏して
「ご迷惑なのは重々、承知しておりますが、ご挨拶だけはと思い…。」と言った久野に、大倉は「よく、よく頑張ったね。」と声を掛けてくれた。
そこで初めて、久野は顔を上げて大倉の顔を見た。
すると、彼の口からは「待ってたよ…ずっと。」の言葉が…。
「5年でも10年でも、ずっと待とうと思っていた。」と言ってくれた大倉の言葉に、久野の目はみるみる涙で溢れた。
翌年、内田久野は大倉修一郎と結婚し一女を儲けた。
そして、その子を、雪乃と名付けた。
[おわり]
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