宣伝会場はじいさんのナンパスポット? | がんばれ熊さん

がんばれ熊さん

食品スーパー店員の絵日記

 

 

私が勤めていた宣伝講習販売の会社

 

会場にお年寄りを集めて高額な健康食品を売るため

 

世間では催眠商法と呼ばれているが

 

お客さんが買う理由は様々だ。

 

高齢者といっても、みんなしっかりしている。

 

そんな中で思い出に残っているお客さんの話。

 

私の前に座っていた小柄なおばあちゃんは、売り出す前から

 

とても興味を持ってくれた。しかし、いざ売り出すとお値段は30万円。

 

買いたいけど年金暮らしで買えないと言っていた。

 

それでも、勧めていたら、売り出し2日目で

 

「熊ちゃん、買うわよ~」と明るく可愛らしい声で言ってきた。

 

しかも、ポンと即金だ。

 

そして、その日から今まで離れて座っていた爺さんと仲良く

並んで座って会場に来てくれるようになった。

 

「へぇ~~、あの二人は夫婦だったのか~」と思った。

 

夫婦で来られるお客さんは話が早い。

 

「旦那さんに相談します」という断りがほとんどなくなるからだ。

 

そんなある日のことだ。

 

会場は畳敷きで、毎日来るお客さんは、明日もここに座りますというアピールで座布団を置いて帰っている人が多かった。

 

この夫婦も置いて帰っていた。

 

そんな夫婦の愛の座布団を

 

夫婦が来店する前に

 

いつも来ている別のじいさんが眉間にしわを寄せて

蹴飛ばしていた。

 

な・・・なにをしているんだろう?

 

「なにかあったんですか?」

と理由を聞くと

 

私が夫婦だと思っていた二人は本当の夫婦ではなかったらしい。

 

おばあちゃんは未亡人で独り暮らしの年金暮らし

じいさんは、奥さんに先立たれて一人暮らしで、そこそこの資産家だ。

 

お互い子供も孫もいているが、離れて暮らしているそうだ。

 

昔から近所に住んでいるので二人のことをよく知っていたじいさん。

 

おばあさんの亡くなったご主人も知っている

じいさんの亡くなった奥さんも知っている。

 

だから、この会場で、急に二人が夫婦っぽくくっつきだしたのが

なんともいやらしく思ったそうだ。

 

座布団を蹴飛ばした爺さんは、その近くにいる他のばあさんにも

 

同意を求めた。すると・・・・

 

「そうなのよね。あの二人は夫婦じゃないのよね」と、近所の人はみんなよく思っていないそうだ。

 

ちなみに、ばあさんは、推定60代後半

安達祐実さんのお母さんに年を重ねさせたような、かわいらしいルックスだ。

 

笑顔がとっても、可愛いと私も思う。

 

しかし、年金暮らしで買いたいけれどお金がない。

 

そこに、じいさんは目を付けたのかもしれない。

 

おそらく爺さんが金を出したのだろう。

 

そして、夫婦っぽく二人で並んで座るようになった。

 

しかし、私は見て見ぬふりをした。

 

買ってくれたらそれでいいというスタンスだ。

 

座布団を蹴飛ばしたじいさんも買ってくれた人。

ご夫婦もどきの二人も買ってくれた人だ。

 

ご夫婦もどきさんは、出てくる高額商品のすべてを毎回買ってくれた。

 

ばあさんがおねだりしたんだろう。

 

じいさんは「よしよし、分かったよ。その代わり、グヘヘヘヘ・・・」

 

と、グヘヘヘヘと言ったかは分からないが、それが二人の距離を縮めたのだろう。

 

いくつになってもおねだり上手である。

 

年を重ねても女は女であることを武器に出来るようだ。

 

この世は男と女の化かし合い。

 

男と女の喜ばせ合いごっこなのだろう