2021,7,18佐藤泰生「マスクに愛を 夜明け」

 

あそこには心臓があって

どっくんどっくん台所のどうも左上の方にある

朝起きるともう温かい熱を持ち

その周囲が明るんでいる

 

遠いところには子供たちがゐて

時たまポッポっと信号を送って来る

かーさんは何か足りないものはあるかいと心配になり

とーさんはいつも精神のことが心配だ

 

便利な世の中だからwebと云ふものでつながっていて

余計なときに余計な写真と共に送られてくる

さあ、寝ようかなんて云ふ時になど

時たまギョッとする

 

とーさんは精神の事柄などが心配で

そんなことは母方や父方からも伝わるもので

みんな繋がってゐる

かーさんは不足はないかいと暗いうちから台所に下りて

すると遠いところから信号がパっパっと送られてきて

左上のあの心臓のやうなものがどっくんどっくんと動き出す

 

倉石智證

妻にケーキ工房。

/電線に歳従へて茜雲

/残月や愛しきことの透きとほり

/里芋とネギこいでくる畑初め

/紫陽花の枯葉を取れば冬芽かな

/防災の有線冬は火の用心凍結注意繰り返しする

/ギンナン割り売り場で買へば痛さうだ

/南天の赤染衛門冬厳しき

/南天の喰ひ荒らされて荒き風

/冬の畑泥付けたまゝ木戸に来て

/剪定の音の響交ふ寒さかな

/正月や美醜を問ふな餅いろいろ

/厨辺は妻のしあわせ an apple

/林檎ケーキ仕上げて妻の厨事

 

倉石智證

男が泣くんだぞ

ほんとうだぞ

ミサイルが割れた

地表も割れ、

割れたミサイルから蝟集する蝶が飛びたった

23,10,31ガザ難民キャンプに空爆

「大虐殺だ、言葉にならない。もうたくさんだ」

 

人間なんてほんたうにたいしたことないな

あそこでは、また

割れた

割れた頭を抱えて走り出す

黄色い火薬臭い空の下で

男が肩を揺すって泣く

 

蝶が海を渡って

一匹でもいいから大統領府に飛んでいけたらいいな

 

倉石智證