おびただしい世界がぼくの隣りを流れて行って
ぼくが一ト鍬畑土に撃ち込むたびに眩暈となって僕を襲って来る
ぼくは掘り起こされてのたうち回ってゐるミミズを見ていて
その歓喜の吐淫色を鵯(ひよどり)が見てゐる
ぼくの背中を大きな世界が流れていって
日曜日であったり村や街の風景であったり
戦争であったり
それはブラームスの音律のやうでもあり
それは青い水色になってとめどもなく空に散らばって行って
もう慰めようにもなかった
まだ三月なのにめずらしく五月の気温になって
ぼくは上着を一枚脱ぐ、二枚脱ぐ
倉石智證












