春分の日

「日延べて春と冬との引き合いて」

翌日、八方へ日帰り。

言語ぢゃない言語を求めて。

/饅頭のやはりこはいと彼岸かな

/薄皮の饅頭の爪楊枝かな

/春工房、パンと饅頭仕上げたる

/ポケットに手を突っ込んで春祝う

/偕楽園梅終日と彼岸の日

/春分けて日延べてけふの彼岸かな

/水仙花土手にしあればそのままに

/毛蕊花まだちっちゃくて水遣りぬ

/春分や春と冬との引き合ひて

と云ふわけで八方へGO。この齢になると弱気な気持ちも湧いてきます。行くまいかどうしようか、“引っ張りっこ”です。八方頂上から白馬三山、五竜、鹿島槍の耀ける雪壁の写真も撮りたいしなぁと、4時起床です。ガンバッテ行って来ました。お叱呼タイム3回、8時20分、駐車場は辛うじて最後尾に潜り込めました。勇躍ピョンピョン平からリフトを乗り継いで頂上へ。ところがなんたるちぃあ、なのです。八方池を目指して樏の登山の人の列は見えるけれど、残念、お山の景色は雲に覆われて真っ白け。一旦菟平まで下りて、テラス中心に何本か遊びます。ゴンドラステーションまで滑り降りてもう一度さあと頂上を目指します。昼近く強風が吹き荒れてきました。オリンピックスタート地点では風で体が黒菱斜面へと持っていかれそうになるくらいです。しばらくして菟平から上のリフトは全面的にクローズされました。やれやれでしたね。帰りは道脇にちょくちょく車を停めて、悔しいからアルプスの写真を撮りましたよ~。

 

倉石智證

/砂糖菓子に消える沫雪春の雪

/健気にも雪乗せ耐える梅雪花(ばいせつか)

/雪降りてマルチに積もる芋の床

/藁ずとの手当ては皇帝ダリアかな

/かーさんに云はれ畑に葱掘りに

/葱掘れば吾にまつはる春の泥

/葱喰へば味噌当てがわれ葱喰へば

葱尽くし───葱の豚肉巻き焼き

ネギトロ丼

 

/雪後晴れ、晴れ後寒き霜の朝

/春の雪一夜の夢と山の端に

/一夜さの夢かと消へて春の雪

 

倉石智證

彼岸入り。

3/18はじ様の祥月命日。

ば様を車椅子にお墓参り。

/畑に出て祥月命日芋植ゆる

/花冷えは桜ばかりか梅の花

/水仙は墓参りとて採られけり

/この径は村の午後まで続きをり名残りの梅の静かに咲けり

/五輪塔に椿寄り添ふ彼岸かな

/墓参り帰り来たりて厠かな

/墓参り彼岸話や介護4

お隣の隣りのお墓は園子さんちの。

100歳の園子さんはベッドからずり落ちて両足骨折、車椅子に。

寝たきりになっちまったが介護4だと、娘さんは話す。

/墓翳に人の影ある彼岸かな

/線香の一炷(いっしゅ)を持たせ南無とする

/此花は何処からと云ふ庭の隅

/この梅の下照る道に車椅子

/ばーさんは枝垂れ桜の暈(かさ)に入り

/彼岸入りばばに美空の眩しかり

/故郷はコチぶち切らる寒さかな

/蕗翠飾りてじじに献杯す

/同じもの捧げてじじに食卓と写真を立ててしばし偲ばむ

 

美空晴れてば様を車椅子に彼岸入りとて墓参りに連れてゆく。お墓の檀の上には上がれないので柵下から手に一炷を握らせてなむなむしてねと促す。お墓であることは辛うじて分かるみたいだが、だれが休んでいるのかは分からない。寺院の枝垂れ桜が咲きほころんでゐる。ばーさんにも懐かしい場所だ。まあ分からんでもいいぢゃないか。境内を横切って車椅子を押す。甍を越えて空に雲がのんびりと浮かぶ。枝垂れ桜の花の暈の下で写真を撮った。

 

倉石智證