しばらくは山菜尽くし。

九州梅雨入り。

/大根のお道化ばばも道化たり

/罪障のありや摘果の蒼き実の

/蕨飯 童となりてお代わりす

/どんみりと人の境に四照花(やまばうし)

/待ち時間句の一つほど花の候

/摘果して林檎追分高梯子

/部屋に咲く綾目は次と花を付け

/ラーメンの美味(おいし)さ夜のこしあぶら

/しばらくは山菜飯や小夜更ける

/芍薬や花の衣の浄土かな

/花殻の王冠よろし花落ちて

/忘れゐし雪折れ桜葉を兆し

/枝豆のほほほほほほほ芽を出せり

/小さきものみな可愛いくて学童の挨拶をして通り過ぎゆく

/紅ハルカ水遣り六日頚座る

/蔓伸びてわき目もふらぬ胡瓜かな

/新じゃがのこうよとばかりフライパン

 

倉石智證

林檎の摘果。

また高梯子の人になる。

林檎の木の下に行けばなにか分かるかもしれない

林檎の木の下にはなにか埋まっているとか

林檎の花びらは未だに清楚で

だから林檎の実が余計に生ってしまふと

林檎の木の下に行って空を見上げ

梯子を立てる人になるのだ

 

今さらながら、りんご可愛いや

それを鋏を入れて摘果をすれば

ああ、故郷を思い出す

おふくろに甘えたい酸っぱい匂いと

山方から来る風と

川の方から来る風と

葉叢を清(さや)かに騒めかせ

ははそはの母の腕(かいな)が木の枝に伸びれば

胸乳(むなち)の甘い香りが

実生の蒼い林檎の物語となって

卒業子は家を出て行く

あゝ、幾たびが罪障の

あゝ、それだから林檎可愛いや

 

倉石智證

山菜採りながら帰郷す。

頭蓋をぬける翠風。

/縞蛇の昼寝の傍を通りけり

/独活採りに谷の底ゐへ降りゆけり

/独活掘りに鶯の声谷峡に

/根曲がりの蒼き色など味噌で喰ふ

/メルローはどうかねと春の調べ

/馬手(めて)に見る千曲川辺は雪解かな

/雪解川魚野に翠滴りす

/豊田では雪室林檎も最期かな

/姨捨に覆面パトカー春憂う

/雪国の村に花咲くチューリップ

色とりどりに春悦(よろこ)めり

/ああ皐月頭蓋をぬける翠風

/蕗っ葉をこんもり採りて爪黑に

/帰り来てまず水遣りぬ畝巡り

 

倉石智證