常に傍らに膨大な何かが流れてそれは書き記すこともなかった

実際に書かれたことはほんとに些細に過ぎなかった

たとへば畑に南瓜の蔓が伸びて

そろそろほんたうに蔓は自身の行方の旅に出ようとしてゐる

それにあの花が咲くと

なにやら頭上が明るくなるやうな気がするのだった

勇気づけられる

 

土蔵と母屋の間には海峡があって

燕(つばくらめ)喜ぶ、喜ぶ燕

少しの泥を与えられて

嘴に藁を咥え幸せいっぱいに

何度でもいそいで家へ帰る

 

予報ではお天気が崩れて来るやうだった

完全防備の人がSSを農道に走らせていった

親子だものこんな時には甘えるのがいいのサ

働き者のば様がゐる

 

倉石

ceasefire

ドクダミと十薬と

幼等の声愛しきやし

アルデンテ

/ドクダミの十字十字と咲きにけり

/十薬の胸乳(むなち)は母の匂いかな

/ドクダミの軍団地下茎の暗躍

/花盗人パチリと写し立ち去りぬ

/角を出て空には夏の鯨かな

/芍薬や花三代を楽しめり

/青梅雨の南から来る昼目覚め

/青梅雨や千の病も連れて来し

/幼らの声愛(は)しきやし角巡り村の外れの橋の辺りに

/デデポポーが啼き出す蒼き葉の深く

/葉叢からデデポポーの聲去年今年

/明日から天気崩れる陣馬山江藤農相辞表提出

娘は散歩だと云ひ陣馬山に。

/トランプの投げ出しにけり停戦をnot my war と無責任かな

/アルデンテ翠を飾るコゴミかな

 

倉石

薔薇の木に薔薇の花咲く不思議なけれと

/春泥を曳きづり土間にえへんおほん

/索麺にすぐに手を出す暑さかな

/山芋のほんわかお好み焼き旨し

/移植して薔薇の芽 針のやはらかく

/抱かれたくてたれか柱の背比べ

/カッコーの朝ばかりなく夕まぐれ

/カッコーの啼くや漢の無聊かな

/春風や無聊慰む髯を抜き

/春雨や芍薬の頸折りてなほ

/セクシーダイナマイトこの色に芍薬

/芍薬やさりとて後ろ振り返る

/芍薬や時計の針を三時半

/働かざる者と云ひ雑草を取る

/信州の根曲がり鯖缶を開けて

/新じゃがや常凡(よのつね)ならん裾を掘り

/初茄子神棚にでもあげてみん

/苜蓿(うまごやし)寝そべってみる空を見る

/アイリスの径の長手に忘れられ

 

倉石智證