はぐらかすははじめからはぐれていたんだ

経糸がはぐれはじめたら横糸もほぐれはじめた

脳ミソなんて当てにならないね

あっという間に道傍に轉乎(ごろん)と落ちた

一声啼いて鳥は電線を飛び立つ

2024,11,13田中千智「眠る人」

 

片手におもちゃを

片手にお菓子を持って

幼児が歩いてゆく

大勢が死んでそれで何ともないのかい

人間が粉々になって

ついさっき天使のやうに寝ていたのに

両手の間になんにも無くなっちゃった

月さへも抱き留められない

戦争は反対だし

死ぬのも反対だ

このままほおって置いたらみんな道にはぐれちゃうぞ

 

えらい人たちは死ぬわけじゃあないし

月はどっちに出ている

別れるとき、せっかくならハグはいいよね

もうまったくはぐらかさないでよ

 

倉石智證

とにかく最後の芍薬が散ってしまった。

ば様はご機嫌───

エンドウ豆の莢剥き。

/花御寮芍薬しゃなり歩くかな

/芍薬も花の牡丹に偽にけり

/春雨もほらそこいらに走り梅雨

/芍薬や花の末期を春の雨

/明るんで寂光浄土花の屑

/緑濃し土鳩の深く鳴きい出す

/緑鬱まつろはぬことばかりなる

/春宵(しゅんしょう)や頓服ひとつどうしませう

クレチアピンは睡眠薬(精神安定剤)。

1錠を2分の1にしてもらって使用しているが、

翌日に影響が残る。

ば様の譫妄(せんもう)。夜中の激しい独言。

妻は大変である。

/ばーさんのけふも豆剥く莢を剥く豆は出たがる床に転がる

「豆が莢から早く出して出して、って騒いでいるよ」

/洗車して車の疵を首夏なりし

/蔓ものの切なきまでの季節かな

藤棚の蔓延り伸長する蔓を剪定鋏で整理。

/卯の花にたれか歌うや夏は来ぬ

/絹さやに豆も賑やかそぼろ丼

/十薬の昏ずむそっと置いてみる

 

牡丹、芍薬、石楠花の花誌───

牡丹は一株。芍薬は三株。時期をずらして咲いてくれる。

■4/18牡丹開花4/21打ちそろって満開4/30花殻摘み

■芍薬第一弾、4/29開花、ゴールデンウィーク盛りに、5/7満開に

(4/29石楠花咲き初める~5/21花殻摘み)

■芍薬第2弾、5/8開花~5/19まだ盛り5/22末期の一輪

■芍薬第3弾、5/5玉結び。5/18盛り。5/23お気張りや。

5/24雨にうたれて落花。

さみしくなるなぁ。

でもずいぶんと堪能した。

どうもありがとう。

地の中には星々もあるかのやうで

時々遠くの奥の方で通信のやうに瞬いたりする

地表には樹木が突っ立って

風が吹き抜ければ話でもするかのやうにさやぐ

ふらんぼんではないが下から見上げているものもゐるのだ

水を毎日上げているうちに赤カブは

急に土の中で膨らんで食べごろになった

きみはそんなことにふぅ~んとでも云ふだらうが

みんな誰しもが幸せになりたくて

じっと木の下で待っている

ほんの悪戯をするかのやうに

地に触れていた胡瓜の下枝を剪ってしまった

畑を一巡りした後で行ってみたら

胡瓜の蔓はネットにぐったりしている

赤カブのことは赤カブ

胡瓜のことは失敗したと云はざるを得ない

地の星々のネットワークの逆鱗に触れたのか

申しわけない気持ちでいっぱいになる

地中の奥深くとほいところで星々が瞬き

それからすっと消える

 

倉石智證