ばーさんは字が書けずなり雲もくもく…

/見逃しの胡瓜は朝に木偶の棒

/星涼しいかがお過ごし小淵沢

/お立ちなせえ向日葵ゆらりゆらりかな

/向日葵の太陽が好き月も好き

/帰り来て西瓜叩けばまだ早い

/這えば立て、立てば歩めと南瓜かな

/ずいぶん今年は柿が無いねとカラスかな

/ばーさんに字が書けずなり雲もくもく蟻の行列紙背を奔る

/いい方に変調は無し老いの坂下っては下り下っては下り

/採れ過ぎて朝にうれしい夏野菜娘に送らんと妻は元気だ

/愛(は)しきやしサンタローザの色具美(いろぐは)し

名前で呼べば聖なる薔薇の

/軒下に雨を湛えて百日紅

/葉揺れむ雨を零さむ百日紅

/花落ちて柘榴はいつか色を初め

/大雨や畑(はた)水浸し三尺寝

雲もくもくから一転、豪雨警報に。

 

倉石智證

暑気払い。

ものちゃんと喰ってるかい ? /八十歳だとよ/池袋からやっとこサ来た/何度も来ているけれどまた迷ったね/道迷い、夏の炎天下に/やがて修正しつつ/お互いがだんだん近づいて来るのが分かる/やっと道を挟んで手を上げる/大丈夫かいなKちゃんてば/ほらほらあの看板だよ/暑気払いたぁ云ふけれど、ほんたうに涼しくなったな/ほんたうに冷ッとするばかりだ/携帯を手に握りしめているのに/一生懸命に携帯を探してゐる/櫛の歯が抜けるやうにこんなに物事が抜けていったら/お終いにはどうなるんでせうね/冷やッこいぞう、お盆前だけれど/それでテーブルに座り/生きていてよかったねとお互いに乾杯する/真夏の夜の夢、なんかぢゃない

 

倉石智證

ひでぇことしやがるぜ

人間なんて勝手だね

1000倍に薄めて使うんだって

ゴム手袋はしっかり付けたよ

4リットルの容器に水を注ぎ足して

溶剤のキャップに4回

怖ろしい液なんだね

朝まだきに放棄地に踏み入る

けふの飯メは除草剤の噴霧

白濁した液が雑草に降りかかってゆく

何の因果でおまへたちは雑草なのかね

歩くたんびに敵意に囲まれて

やれやれだね

ほおって置いたらえらいことになるなんて

確かにほおって置いたら大変だ

夏が終わる頃には人間の背丈ほどのジャングルになるでせう

 

運命とはなにか、

偶然には意味があるのか

GazaはGazaだ

空から災厄が降って来る

 

身体にも土の中までも根がちりちりと灼けてゆく

台所で呼ばはる夏の朝のフルーティーボイスに

この地表と地面の下には断末魔の声が聞こえる

 

倉石智證