花在り、

惜別たり。

/芍薬の珠は小蟻の臺(うてな)かな

/何時集合になりますかと春のお出かけ

/夜の夢やジャーマンアイリス目覚めつゝ

/日日草蔓にしあれば日の送り

/まず里にそれから麓山笑ふ

/春の宵子を遊ばせてクリームパン

/演題は詩趣酣酣(しいしゅかんかん)藤牡丹

「詩趣酣酣」は塚本邦雄

/ささやかな朝餉絹さやを摘んで

/希望の朝だ天上天下じゃがいもの朝だ

/玉ネギを肥からしめて春の風

/庭前に花在り惜別の辞なり

/鰥夫(やもお)かな身欠き鰊の蕎麦喰ふて

 

倉石智證

牡丹、藤房のいよいよ終末に。

庭の芝刈り。

洗車。

富士に農鳥。

/春四ン月皇帝ダリアものめくや

/颯爽とトラクターゆく田の畔に富士の高嶺に農鳥出たよ

/絹さやの蔓化けかなぁと妻云ひし

/蕗っ葉のスジ取る爪のか黑かな

/村道を風渡り来る藤の花

/藤房の王冠の下風わたる

/藤房の善き風得たりおまいさま

/崩れゆく土蔵の壁に藤の花

/重雄さんのダイナモの音草刈り機完全防備お前掛けして

/モアの人けふの天気に二、三人

モア=乗用刈り払い機

/チップソー換えて午後には庭師かな

/苗市やいよいよ胡瓜、茄子、トマト

/洗車して花粉情報聞きそびれ

/クマンバチの門柱を出て戻りけり

/春昼や妻はパン屋になりしかど

/北斎の風に揺らげる芥子の花けふほー丹に風止まずなり

葛飾北斎の名画───

風に揺らげる芥子の花。

画角からはみ出そうだ。

 

倉石智證

花の四時。

風光る。

過ぎゆく時計。

/嬲られて蜂花房をまろび出る

/風力8 甲府盆地に風光る

/柿若葉ばかりではなく新樹光

/ダイブして我が意を得たりツバクラメ

/黒檀の絖(ぬめ)のよろしくツバクラメ

/校庭に子供らの声風光る

/四季の会女子一人ゐて風光る

/ざる饂飩葉闌の皿に盛り付けり

/がうがうと虎落に虎落春嵐

/新しいモネの時間が過ぎてゆく川原に咲けり矢車草に

/フクシマや卯月卯波の波高し

/春の夜の存分にして死体遺棄(南丹市、けふ4/16逮捕)

/夏蛍飛び交う春の濃闇や

/キスをする電信柱のごとにする影絵のごとく人の老ひたり

さう云ふ若者もやがて古稀になる。

 

倉石智證