娘は筍掘り。

夫婦は野菜の苗植え。

/ベランダで手を振る吾娘(あこ)に四月風

大きくなって親を見送る

/つい破顔筍掘りて云ふところ

/筍掘り熊とは遇はず人見ころ

/野趣勝るモツと野蒜を炒めけり

/接木の胡瓜を二本植ゑにけり

/実生から南瓜の苗を試しけり

/ミニトマト黄色の色も入れにけり

/草取りて畑の境へ巡りぬ

/芍薬のしゃなり眩しむ陽の光

/アイリスの人物語り活けられて

花は独りで語り出すのでありました。

 

倉石智證

花のことは花に問へ。

苗の植え付け。

不道徳な文明。

/本マグロ桜の季節過ぎつゝも

/山下りてしばらく山菜うどんかな

/花のことは花に問へとや牡丹散る

/芍薬や牡丹の後の花教訓(おしへ)

/背糺して庭のツツジの白さかな

/ナス胡瓜トマトを植ゑて励ませり

/茄子トマトおーきくなれと如雨露に水

/アスパラと絹さや オリーブ炒めかな

/藤房に莢付け初めて風さやぐ

/学ぶこと未来に触れる若葉風

/苜蓿(うまごやし)の遊びは秘密めかしける

/かーさんのフレイルぼくに青葉鬱

/或る人は美女三人を春の乱

/おそらくはひざ丈超えるダリアかな

/タンポポの綿毛飛んでけカタパルト

/袋田や一千匹の風の鯉

/生き死ぬの境 銃声夕食会なにやってんだらうこの人たちは

/海越えて人の生き死に瀬戸際にまたもトランプ銃声響く

▲この人たちの文明はつくづくと不道徳だ。

 

倉石智證

春色天に至れり。

/惜別の辞 藤房に牡丹かな

/アイリスの背中(せな)を伸ばせる畑の隅

/アイリスの花解かれゆき紫に

/雪溶けてほつほつ翠蕗の薹

/山桜あんなとこにも桃の色

/笹鳴るや名残りの桜散る桜

/根曲がりや鶯を聞く藪の中

/小布施来て鶯を聞く五岳かな

/早緑(さみどり)の目の驚きやコシアブラ

/カップ麺にコシアブラてふ春の韻

/天ぷらを塩で頂く山野かな

/菜の花畑たしかに暮れる夕明かり

/老ひの身に春風誘ふ身の懈怠

/蕗味噌にはやりすたれのあるものか

/あんなにも裾野をとほく引っ張って八ケ岳には春の風吹く

 

倉石智證